音声ブラウザ専用。こちらより記事見出しへ移動可能です。クリック。

音声ブラウザ専用。こちらより検索フォームへ移動可能です。クリック。

NIKKEI NET

社説2 伊新政権に構造改革の重責(4/16)

 イタリアの上下両院総選挙で、ベルルスコーニ前首相が率いる中道右派が圧勝した。5月上旬にも第3次ベルルスコーニ政権が誕生する。中道右派は上下両院で過半数の議席を確保した。伊共産党左派の流れをくむ小政党は議席を失い、政党数が激減した。プロディ政権と異なり、安定政権を樹立できそうだ。

 前政権は連立与党から小政党が離脱した結果、上院で多数派の地位を失い、日本の国会と似た「ねじれ現象」で崩壊した。イタリアは上下両院が全く同等の権限を持つため、日本以上に政権運営が難しかった。

 ベルトローニ前ローマ市長率いる中道左派と大差をつけたとはいえ、安穏としてはいられない。新政権には2つの重大な責務がある。

 第一は経済の再建だ。イタリア経済は低迷が続き、2007年10―12月期も08年1―3月期も、実質国内総生産(GDP)成長率はゼロまたはマイナスと予測される。

 ユーロ圏景気は米国などに比べて堅調といえるが、ドイツとフランスの成長に依存する面が大きい。経済規模が域内で3番目のイタリアは、むしろ足を引っ張っている。新政権はまず、同国の成長力を高める構造改革にとり組む必要がある。

 ベルルスコーニ氏は、過去にバラマキ的な経済政策で財政を悪化させた経緯がある。今回の選挙公約でも実現性に疑問符が付く減税案が目立った。経済の立て直しに失敗すれば再び政局は不安定となるだろう。

 第二は選挙制度の改革である。同国の現行の選挙制度では、安定した政権維持が極めて難しい。両院が対等であるほか、上院では20州に配分した議席の中で、州ごとに最多得票政党が55%の議席を得る。

 地域によって経済事情が多様なイタリアは、有権者の関心事が州により千差万別なため、1つの政党が上院全体で多数派を獲得するのは難しい。小政党の乱立も招きやすい。政治家は、近視眼的な人気とりの政策の誘惑に駆られがちだ。

 構造改革は時間がかかる作業である。成長力を高める効果は一朝一夕には表れない。国民や企業の痛みも伴う。中道右派は今回、上下両院で過半数を得たが、選挙制度の改革にも積極的にとり組むべきだ。

社説・春秋記事一覧