大手流通業の拡大路線が転機を迎えた。イオンは今後3年間で傘下の総合スーパーの約4分の1にあたる100店を閉鎖または業態転換する。セブン&アイ・ホールディングスも外食部門などで業績不振の店を順次、閉鎖していく。消費低迷の背景には少子高齢化など社会の構造変化がある。内需型産業の代表とみられてきた流通業は、中国など経済が成長し購買力が高まるアジアでの事業展開に活路を求めることになる。
昨年まで百貨店とスーパーは11年、コンビニエンスストアは8年連続で既存店売上高が前年を下回った。かつてダイエーは地元の要望で不振店の閉鎖計画を一部撤回し、傷口を広げたことがある。イオンの岡田元也社長は先週、記者会見で「地元の反対もあるだろうが、確実に(閉鎖は)やる」と言い切った。消費の先行きへの認識の厳しさを示す。
イオンは地方を中心に総合スーパーと並ぶ収益源に育てたショッピングセンターについても、出店ペースを従来の半分に抑える。セブン&アイも総合スーパー数店のほか、ファミリーレストランなどを今後3年で140店閉鎖する。高齢化やガソリン価格高騰でクルマによる来店客の足が遠のいていることも、クルマ社会を前提とするビジネスモデルで成長した流通業には痛手となった。
中国などでは今まさに中間層が育ちつつある。日本の流通・サービス業が高度成長期から培ってきたノウハウを生かす好機だ。イオンは国内投資を3割減らす一方で海外投資を4倍に増やし、中国・東南アジアの店舗網を今の約4倍にあたる200店近くに増やす。セブン&アイも中国でのスーパー出店を加速するほか、これまで直営方式で広げてきたコンビニエンスストアのフランチャイズ展開を本格的に始めるという。
両グループのほかにも、百貨店、牛丼店、居酒屋、衣料品店など、日本の流通・サービス業によるアジアでの生活関連ビジネスの成功例は増えつつある。出先の「支店」が好評なら、日本の店にも行ってみたいという訪日観光の動機づけにもつながる。日本式の生活文化を味わいたい、学びたいという人も増える。流通・サービス業のアジア展開の効果は目先の売り上げだけではない。