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2008年4月16日

◎台湾へ観光使節団 「オール北陸」に意味がある

 小松―台湾定期便就航を機に石川県が台湾に派遣する観光使節団に富山、福井県の担当 者も参加することを大いに歓迎したい。台湾からの観光誘客や交易は、いわば「オール北陸」で取り組むことによって、より大きな成果が期待できる。今回の三県「合同」の使節団派遣をそのための効果的な一歩としたい。

 台湾との航空便をめぐる石川、富山県のこれまでの動きは、競争や綱引きがもっぱらで あり、戦略にもおのずと差異がみられる。しかし、多様で広域的な魅力づけが必要な観光などで北陸の総合力を発揮すべきという認識や、そうしなければ北海道や東北、九州などとの地域間競争に後れをとるという危機感も関係者の間で徐々に共有されてきている。先に富山県の訪問団が台北を訪れた際、現地の観光関係者からなされた「ゾーン(地域)で魅力をアピールしたほうがいい」という助言は、まさに的を射ている。

 北陸三県が合同で観光PRを行うことはこれまでもなされてきたが、協調よりもライバ ル意識が先立つ感もあり、富山県が訪問団の派遣に合わせて台北市内で開いた観光商品の提案・商談会は岐阜、長野県との共同開催で、石川や福井県の影も形も見られなかった。いろいろな思惑もあってのことだろうが、今後はもっと「オール北陸」を意識してもらいたい。

 昨年、富山県を訪れた約八万七千人の台湾の人たちのうち、富山空港へのチャーター便 利用者は17%に過ぎないという。大部分が他の空港を利用して富山に来ている事実は、小松―台湾定期便就航が富山県にとっても誘客の好機であることを示している。そう考えれば、石川との共同戦線はむしろ当然ともいえる。石川県では兼六園、富山県では立山黒部アルペンルートが台湾からの観光客の人気スポットになっているが、両県に福井県も加えれば観光の幅は広がり、質も飛躍的に高まる。

 富山県は台北で物産展も開催したが、特産品の売り込みも北陸の枠組みで行うことを考 えてよいだろう。三県による今回の使節団派遣を、そうした取り組みを拡大する足掛かりとしたい。

◎野党の医療制度批判 大衆迎合の危険なにおい

 「保険証が届かない」「年金から天引きされるなんて知らなかった」などの不満が石川 県や富山県内の自治体窓口に相次ぐなか、後期高齢者医療制度の保険料の天引きがスタートした。二年も前に法律ができていたにもかかわらず、大混乱を招いた責任は、厚生労働省の怠慢にあると言わざるを得ない。

 ただ、「うば捨て山よりひどい」といった野党の批判には、ポピュリズム(大衆迎合) の危険なにおいがする。天引きは支払いの手間を省き、納付漏れを減らして徴収コストを下げるメリットがあり、天引きをやめれば、高齢者が自分で支払いをしなければならず、徴収率も下がる。保険証が届かないなどのトラブルはいずれ解消されるものであり、混乱に乗じて制度そのものを廃止せよと主張するのは、いかがなものか。

 約三十兆円の国民医療費のなかで、老人医療費(七十歳以上)は約十兆円に上る。毎年 一兆円前後増える医療費のうち、最も伸び率の高い老人医療費を減らす工夫は必要だ。高齢者の負担は、できるだけ少ない方が良いに決まっているが、負担を減らそうとすれば、そのシワ寄せは現役世代にいくのである。

 民意を敏感に政治に反映させていくのは当然としても、それはあくまで「大衆本位」の 政治を実現するためであって、「大衆迎合」とは違う。ポピュリズムを全否定はしないが、ポピュリズムに振り回されてしまっては、政治の方向を誤るだろう。私たち国民は、政府・与党および野党の主張に耳を傾け、どちらが民意を正しく反映しているのか、冷静に見極めていかねばならない。

 今回、混乱が拡大したのは、福田政権が新たな軽減策を講じた結果、保険料算定基準の 自治体への通知が遅れたからである。それが保険証をめぐるトラブルを招き、周知の遅れにもつながった。制度の複雑さ、年金からの天引きという徴収方法も不安を増幅させた要因だろう。だが、そうした不安につけ込んで「高齢者を早く死なせようとしている」などと批判するのは、やり過ぎではないか。


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