あの熱気を思い返している。
ちょうど三年前の春。旧合併特例法の期限切れを迎え、「平成の大合併」はピークを迎えた。岡山県内では対等合併を行った十三新市町の多くが、四月に新しいリーダーを選ぶ合併選挙に臨み、四年に一度の統一地方選をはるかに上回る選挙ラッシュになった。
混乱も多かった。合併相手を選ぶ住民投票や首長、議会のリコール(解職、解散)も行われた。選挙戦の舞台裏では新しい自治体の主導権をめぐる駆け引きを露呈する場面もあったが、総じて言えるのは、慣れ親しんだふるさとの地図を描き替えるにあたり、住民が地域の針路づくりに高い関心を示していたことだ。
当時、周辺の町村を吸収する編入方式を取った同県内四市では市長選が行われなかったが、その後の市長辞職や任期満了などに伴い、選挙を実施済み。合併自治体で市長選を経ていないのは、倉敷市だけとなった。
その倉敷市長選が二十日告示、二十七日に投開票される。無所属の現新三人が立候補を表明し、激しい前哨戦を繰り広げている。
周辺二町を編入して四十七万都市となり、中国地方三番目の規模を誇る倉敷市。産業・観光都市として知名度が高いが、観光客は全般的には減少傾向。中心市街地の空洞化も進み、曲がり角に来ている。市長選でまず問われるのは、今後のまちの方向性を決める青写真と理念だろう。
選挙戦では、住民の議論を誘う明確な政策が出そろうことを期待している。あの熱気よ、再び―である。
(倉敷支社・高見幸義)