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ジンバブエ:医療、崩壊の危機 独裁政権のしわ寄せ拡大

 【チブ(ジンバブエ中部)高尾具成】大統領選(3月29日投票)の結果発表が遅れ、ロバート・ムガベ大統領(84)の「不正工作」が指摘されるアフリカ南部・ジンバブエで、庶民の暮らしを無視した政策や「独裁」に対する欧米の経済制裁が原因で、医療が崩壊の危機にひんしている。電気も水道も止まり、水も井戸でくみあげるなど、悲惨な現状を地方都市で見た。

 首都ハラレから南へ約140キロ。中部チブの公立ナリラ地方病院は停電が続き、暗闇に包まれていた。医師は一人もいない。24時間態勢で対応に追われる男性看護師長は「搬送が遅れ、救える命が失われていく。医療機器、薬、すべてが欠乏している」と訴えた。

 病院には使い古された医療機器が置かれていたが停止したままだ。水道は止まり、毛布やシーツは川で洗濯後、天日干しする状態だ。看護師長は「薬や包帯から人員まで不足している。住民の協力だけが残された医療体制だ」と話す。

 看護師長は80年代を懐かしむ。独立後、農業国として順調に発展し、医療サービスも十分だった。ムガベ大統領が独裁色を強め、経済が悪化するにつれ、予算が減らされ、医療サービスも薬の供給も不十分にならざるをえなくなった。

 食堂施設は、閑散としている。病院の裏庭で入院患者の親族がたき火で調理していた。近隣住民(25)は「他に頼る場所もないのに」と顔をしかめた。

 近くの総合病院も事情は同じだ。年約12万5000人の患者に対応する医師は1人。薬は年1500人分だ。チンヨカ・タカラダ医師(30)は眠る間もない。「自宅でひっそり命を絶つ人が多い。外交関係を修復してもらい、国際支援を待つしか改善の道はない」と話す。ムガベ大統領の独裁的な長期政権によるしわ寄せは、都市以上に地方に深く広がっている。

毎日新聞 2008年4月16日 東京朝刊

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