2003年10月15日号
特集/創価学会の選挙戦―公明党支援活動の構造
創価学会の会合に見る選挙闘争の実態
―選挙一色だった町田「栄光躍進総会」
ジャーナリスト 乙骨正生
平成7年12月4日に開催された参議院宗教法人等特別委員会に参考人として出席した秋谷栄之助創価学会会長は、創価学会の政治活動・選挙活動は、宗教活動の合間に行われる「限定的活動」であると公言した。
だが、今年平成15年を例にとっただけでも創価学会は、4月の統一地方選挙での公明党の「完勝」に向けて年初から全組織挙げての選挙闘争に挺身。そしていままた11月9日投票が確実な衆院総選挙に向けて全組織挙げての選挙闘争を繰り広げている。さらに衆院選挙が終われば明年夏に実施される参議院選挙に向かって走り出すものと予想される。この事実一つ見ても分かるように、創価学会は選挙を中心としたスケジュール闘争を組み、年柄年中、全組織挙げて学会員を選挙闘争へと駆り立てているのである。
また創価学会は、会館などの宗教施設を使用しての選挙活動についても、公明党候補が会合の幕間に挨拶するようなことはあるが、会合自体は宗教活動であると強調。会館を政治活動に使用することはないと強弁している。
だが、こうした主張も詭弁以外のなにものでもない。というのも会館で行われている創価学会の会合を子細に検証すると、そこからは宗教活動を隠れ蓑にした政治活動・選挙活動を、恒常的にしかも確信犯的に繰り返している創価学会の実像が浮かび上がってくるからである。すでにこうした事実は、月刊誌・週刊誌等でたびたび指摘されているが、衆院総選挙を前に、あらためて宗教活動を隠れ蓑にして政治活動・選挙活動を行う創価学会の実像を、ビデオテープに残された会合を基にして検証してみたい。
選挙は「打倒日顕」の戦い
俎上にあげるのは、平成7年3月5日に行われた東京都町田市の創価学会組織の「栄光躍進総会」である。当時、創価学会は、公明党が初入閣した非自民連立政権が平成6年に崩壊、自民・社会・さきがけに政権を奪われていたことから、新進党を全面支援して政権の奪還を企図。また、自・社・さ政権の背景には、反創価学会の立場に立つ有識者や宗教者らによって結成された「四月会」があるとして、「四月会」や阿部日顕日蓮正宗法主らに対して激しい敵意を燃やしていた。
「本日の総会は池田先生ご来訪10周年を記念した総会であり、また新聞啓蒙で大勝利し池田先生より特別区とお話をいただいたわが町田が、東京のそして全国の完全勝利の全責任をいよいよ担いだす大事な総会です」との司会の挨拶で始まった町田の「栄光躍進総会」。まず最初に口火を切ったのは、同年4月に実施される統一地方選挙神奈川県議選挙に、町田市に隣接する大和市から3期目の立候補をした公明党の益田はやお県議(現神奈川県議会副議長)だった。創価学会いうところの「幕間の挨拶」である。
ちなみにここで東京の組織である町田の総会で神奈川県議が挨拶した理由は、東京都と神奈川県では行政地域は別だが、大和市と町田市は隣接しているとともに、町田市議選ならびに東京都議選は統一外であるため、町田の学会員はフリーに活動ができるからである。すなわち創価学会は東京都民である町田の学会員に、本来、神奈川県民が選択すべき神奈川県議選への介入を促したのである。
その「幕間の挨拶」で公明党の益田はやお県議は次のように発言した。
「そして三たび、なんとかそういう場で働かせてもらって、一人の市民のために頑張らせてもらいたい。このように決意した次第でございます。また私は公明の議員でございます。私の奥底では、今度の戦いは打倒日顕(日蓮正宗法主)、山友(山崎正友・元創価学会顧問弁護士)、こういった四月会、この人たちに対して鉄槌を加える戦いである。その時に最重点区で大変苦しい戦いではありますが、候補者として戦えることに無上の喜びを感じて、いまやらせていただいております。
どうか町田のみなさん。大和は超激戦区で苦しんでおりますが、私も必ず4月9日には勝ってご報告をしたいと思います。なんとか皆さん方の力で勝利をさせていただきたく、心からお願い申し上げます。よろしくお願いいたします」
神奈川県議選の戦いは「打倒日顕、山友」そして「四月会」に「鉄槌を加える戦い」なのだという。この一事をもってしても創価学会そして公明党の選挙がいかなるものであるかは歴然だが、勤行・唱題に続いて活動報告に立った婦人部の活動報告は、創価学会・公明党の選挙、そして宗教活動である創価学会の会合の性格がいかなるものであるかをより端的に示している。そこにはこうある。
「私自身、啓蒙の真っ只中、功徳で思いもよらず田舎から10万円のお小遣いをいただきました。財務(年1回実施される寄付金集め)との思いでしたが、そうだ支援活動に使わせていただこうと決めました。3月10日、11、12日の交流デーには、私は大和、八王子に行きます。地区部長は氷川へ、地区担は八王子へ、また秋田、山形、大阪、愛知、川崎と行き先が決まりました。6日には地区出陣式に替え歌を歌い、元気いっぱい行います。みんなのFさんの大漁船サカイ丸に乗せて、また日本横断福運手形をつくり、日本地図に張り出したりと、楽しく全国交流をしていきます。
わが地区は、窓のむこうは相模原という地域柄、買い物先でお願いしたり、新聞講読のお礼かたがたF(フレンド票、学会員以外の外部票)闘争に走り回っております。T地区担は相模原の山崎順二(相模原市議会議員、公明)候補と出身校が同じということを武器に、同級生に訴えています。そして今回の阪神大震災での政府の対応のずさんさに、友人たちも憤りを感じており、ここぞとばかりに学会青年部や公明議員の対応のよさを訴え、票につなげております。
町田は全国のみなさんにいつも応援していただいているので、ひとごとではなく、わが地域の法戦の思いで私自身も人脈すべてに総当たりし、私たち町田の力で全国の完全勝利を勝ち取り、東京特別区の使命をはたしてまいります」
“ウソ”をつくことを誇示
ちなみにこの活動報告に際しては、男性会員数人が「4月会を倒し、4月に勝つ」との横断幕を掲げている。続いて活動報告に立った壮年部のS氏は、「ウソをついてでも公明党票」を取ることの重要性を次のように強調した。
「この勢いはとどまるところをしらず、次に迎える大事なこの法戦を、すべての選挙区で大勝利させ、金森南支部のわれわれが行くところ、すべてトップ当選させてやるんだとの意気込みで動こうと決めました。そのためには長である自分自身が率先してFをとることからはじめようと決意し、聖教新聞の決着の戦いの渦中ではありましたが、出身地の名古屋の友人に片っ端から電話をし、今日までまず7人のFをとることができました。
この3月からまず第一波として、10日、11、12の3日間を金森本部大和栄光デーと銘打って、今回聖教啓蒙で頑張った支部の活動家177人全員が大和市にでかけます。そして私も愛知、岐阜、三重に率先してでかけ、Fを取りきる予定です。
私は前回の参議院選挙で荒木清寛(公明参院議員)応援のとき、職場の朝礼当番で支社長はじめ30人の社員の前で、『私は荒木の同級生なので応援しています。今回立候補はしたものの知名度がなく大変苦戦しております。弁護士というのと若いのが取り柄です。どうか応援してください』と勇気をふるって話したところ、皆が駆け寄ってきて『大変だなあ。応援するよ』といってくれました。
この反応を見たとき、職場で実際の実証を築いた結果だと確信を強くもちました。もちろん、最後の投票日の日も電話で送り出しの確認もして、確実な票にしました。荒木さんは創価中学、創価高校、創価大学出身。私は地元の中学、高校、大学です。同級生でもなんでもありません(笑)。共通点は歳が同じということだけで、直接に話したこともありません。これからは知恵の戦いだと思います(笑)。
今回の統一地方選の戦いにおいても、しっかりと御本尊に祈りながら知恵をふりしぼって、わが支部の力ですばらしい5・3(創価学会の日)を先生とともにお迎えしていきたいと思います。それが町田を東京特別区と呼んでいただいた池田先生への恩返しであると思っています。
また、これらの戦いがすべて悪の元凶、日顕を還俗させる大きな因となることは間違いないと確信しております」
創価学会ではこうした会合を宗教行事であり、選挙活動・政治活動ではないと主張している。だが話の内容は選挙一色。世間ではこうした会合を選挙の決起集会というのである。続いて登壇した町田の創価学会組織の婦人部のトップである区婦人部長は、選挙で「四月会」を打倒しようとこう煽った。
「昨年、私たちは四月会に怒りを、そしてとんでもない一族がいる、その輩がいるということで、怒り心頭に達して、四月会の創価学会に対しての四月会ということに関して怒りをぶつけながら、折伏とそして聖教新聞の啓蒙に頑張りました。この四月会の沈没作戦は、これから行なわれるであろう参議院の時でもなく衆議院の時でもなく、私は今すごく大事なことは、これから行なわれるこの統一選にかかっているんではないかな、そこからすでにはじまっているというふうに思うんです。
そういうことで、本当にこの今回行なわれる統一選に大勝利すること、これが四月会全体に大きなひびを入れるという戦いなのではないかと思うんです。そういう意味で、一歩も退けない戦いのこの統一選を大勝利する、そのことが大いなる日顕の首を切る、そして四月会打倒の大きな戦いになると思いますので、全力をあげて私たちは支援の活動に入ってまいりたいと思います。
婦人部は、関西の同志の言葉を借りますと、『私たちは何でもいいまくる達者な口があります。そしてどこにでも行けるたくましい足があります。そしてどこにでも入っていける厚かましい心臓をもっております』この婦人部のもてる力を最大限に生かしながら、自身の全人脈を駆使して『春3月いざ出陣、春風に乗って全国制覇』を合言葉に元気に頑張ってまいりたいと思います」
続いて登壇したのは創価学会の町田組織の責任者である萩本直樹副会長。この萩本氏は、創価学会本部広報室に所属し、本誌9月1日号で特集した宗教学者や宗教者等に対する取り込み工作などに従事している人物である。その萩本氏は、「2001年めざし、東京特区町田の新たなる前進を」と題してこんな発言をしている。
「いよいよきょうからは東京大勝利、そして全国大勝利に向けまして私たちの支援交流の戦いに勇んで挑戦してまいりたいと思います。さきほどもありましたとおり、『春風とともにさっそうと全国交流へ』と、こういうスローガンで大交流を躍動の中で行なってまいりたいと思います。
まず第一歩としましては、この次の土日であります3月11、12、第2東京(三多摩地区)・神奈川の交流。まずここで率先して私たちが動いて、その次の座談会週間で大いに交流の体験を語りあいながら、波動を与えていきたいと思います。そして18、19、20、21、ここでは東北の激戦区をはじめとする東日本交流、そして3月25、26の土日、西日本交流と。このように一波、二波、三波と全活動家が大いに動いて、語り、交流をしてまいりたいと思います。
私自身も東日本交流では、長野県の松本市、西日本交流では大阪の吹田市、このようにでかけてやってまいる決意でございます。まず本日参加の私たちから大きな波動を起こし、その波動が町田第一線の隅々までその波動が及ぶという、こういう流れを今日からつくってまいりたいと思いますので、都議選の全国へのお礼の意味も込めまして、なにとぞよろしくお願いしたいと思います」
そして最後に指導に立ったのが浅見茂東京長。東京の創価学会組織の責任者である浅見氏の話は、終始、政治と選挙に彩られており、創価学会のメンタリティを知る上で、大変、興味深く、本来なら全文を紹介したいのだが、紙面の都合もあるので主要部分のみ抜粋して紹介してみたい。
まずは当時、「四月会」とともに創価学会批判を展開していた亀井静香運輸大臣に対する学会員の怒りに触れた浅見氏。その怒りが青森県知事選挙での新進党推薦の木村知事(今年、女性スキャンダルで辞任)の当選につながったと一くさり。その上で、次のように「四月会」ならびに「四月会内閣」の打倒をアピールする。
「で、このこと(二信組問題)を通して今度は誰が追及されるのか。それは武村大蔵大臣でございます。四月会の、この1年前に四月会ができ、この1年間学会をそれこそ日顕宗や山崎正友やマスコミと一体となって、学会を追い込めようやっつけようとしてきた、そのときの権力者たちは1年もたたないうちに、そんなものに負けてたまるかという私たちの思いが、皆さんの聖教新聞の啓蒙の戦いに結実して、そして支援活動に頑張ってくださって、それが次々と結果を呼んで、その四月会に並んだその権力者たちがいま一人一人制裁を受ける。マスコミも順番に私は制裁を受けるときじゃないかと、こう思うわけでございます。
そういう意味では、四月会が4月にできた、その4月が、四月会が四月会内閣といまの内閣を言うんだったら、この4月、もうなにを言いたいかわかっておりますね。この4月の決戦をもって、四月会・四月会内閣を粉砕したいと思いますが、皆さんいかがでしょうか」
都内・近県・全国支援を強調
その上で、「決戦」と称する統一地方選挙に言及。全国各地に支援に入るよう、次のように指示した。
「そういう状況の中、青森の同志の皆さんが戦っておられますし、盛岡にまいりましたら、2期連続当選して今回新人に創価大学の3期生に候補者がかわりました。やはり1万2000票とらなきゃならない。2000は上乗せしなきゃならないという選挙でした。ちょうど打ち合わせが終わったあと、秋谷(栄之助)会長が皆さんを激励して『皆さんのほうからご要望はありますか。なにかあれば』と聞いてくださったんですね。一番前にいた婦人部長さんがぱっと手を挙げまして、『私たちはきょうは東京から東京長もお見えなので申し上げたいと思いますが、私たちは毎回の東京都議会選挙では岩手県は全力をあげて応援しております』そういったとたん、なにが言いたいのかよくわかりました。私はすぐにそこで立ち上がりました。『ただいまのお話を聞いて、東京に帰りましたら皆さんにぜひ応援を大きくご支援を申し上げるということで、お願いを東京の各区でしてまいります』こう申し上げたんですね。
そうしたら、もう終わったと思ったらまたぱっと手を挙げまして『ただいまそのようなお話がありましたが、具体的にはどのような形で……』婦人部は詰めてくるわけでございます。ちょうど坂口(幾世、全国婦人部長)婦人部長もそこにいらっしゃいまして、私と坂口婦人部長が立ち上がりまして『東京の会合に出たらすべての会合で盛岡への応援をお願いしてまいりたいと思います』言っちゃったもんですから、町田の皆さん、どうぞよろしく」
「関東では栃木県の足利、また長野県の松本、静岡では清水と沼津、みんな超重点区がございます。ご案内のように神奈川、埼玉、千葉、東京を取り囲むこの3県も激戦を展開中でございます。今回のこの私たちの戦いとして、全員3月のこの期間に東へ西へと全国の懸命に戦う同志を応援し、この4月に、この決戦で決着をつけるとの思いで、力を入れて取り組んでまいりたいと思います。
関西の同志が幹部会を開いた。神戸の代表がいま一生懸命地区と支部の組織の掌握をしている話の報告がありました。いろいろなところに避難してらっしゃる。日本全国に分かれて生活してらっしゃる皆さんが、皆さんの安否を確認しながらどんどん進めてらっしゃる。そういう中、日曜の勤行会が順次行なわれるようになってきた。意気軒昂である。兵庫の選挙は6月11日に県会、神戸市会、西宮市会、芦屋市会は6月11日になります。だけれども大阪の人たちは、今回関西の勝利は神戸のために頑張るんだ、兵庫の皆さんのために。このように口々に幹部が幹部会で訴えておられます。
そういう意味では、私たちが現地に大阪に足を運んで、そして支援をしてさしあげることが、行ってさしあげることが最大の応援ではないか。このように思うわけでございます。『常勝の空』を声高らかにきょう合唱していただきました。この先生は『学会は一つだね』この思いを受け、今回のまずは統一選、4月9日の大勝利をめざして頑張ってまいりたいと思います。
そして4月23日、東京は279名、先日1人離島部のほうの方の公認が行なわれましたので、279名となりました。三多摩地域は99名でございます。国立、府中、多摩、稲城、これらを重点区と第2東京はいたしまして、全部落とすことのないように、大勝利をしたいとの思いでいっぱいでございます。
先日も府中へ、国立へ、稲城へ行ってまいりまして、今度は多摩にも11日にまいります。どの選挙区も大勝利できるよう、そこで言われることは『町田の皆さんに会ったら、東京長、よろしくお伝えください』このように言われるわけでございまして、それらの声を代弁して最後に申し上げさせていただきたいと思います。
わが町田の皆さん、皆さんの先生からいただいた大きなこの『使命の王者』とのその町田の使命を、全員今回の戦いで再び示していただければ、このようにお願い申し上げる次第でございます」
統一外である町田の学会員に、都内・近県のみならず全国の選挙区への熱烈な支援を呼びかける浅見氏の話は、宗教活動に名を借りて行われる創価学会の選挙活動・政治活動の実態をよく示している。そしていま、全国の創価学会組織は、この平成7年3月の町田創価学会の「栄光躍進総会」での各種の幹部や活動家の発言に象徴される「法戦」への参画を煽り、東京12区や神奈川6区、埼玉6区をはじめとする公明党候補が小選挙区に立候補した地域に、「交流」「支援」の名のもとに大量の活動家を動員、熾烈な選挙闘争を展開しているのである。
その実態は、戸別訪問を含む熾烈な選挙活動だが、創価学会ではこれを宗教活動と強調しているのである。
乙骨正生(おっこつ・まさお)フリージャーナリスト。1955年生まれ。創価中学・創価大学法学部卒。宗教・政治・社会分野などを取材、週刊誌・月刊誌を中心に執筆。著書に『怪死』(教育資料出版会)『公明党=創価学会の野望』『公明党=創価学会の真実』(かもがわ出版)など。
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