立命館大が生命科学部の入学者の大幅な超過で他学部への転籍を募集した問題で、大学が常任理事会名でまとめた学内文書に、超過の問題点として「教育条件の保障」など学生への教育における課題を挙げていないことが15日、明らかになった。同日、大学が学生向けに出した文書では「教育条件の確保を最優先」と書かれており「議論の経緯と説明が不十分だ」との声が出ている。
文部科学省は同日までに、立命館大に転籍募集について説明を求めた。入学者選抜で不公平が生じたかどうかを判断し、対応を決める。
今回の転籍募集に関しては、当該学部の私立大学等経常費補助金が不交付とならないよう、定員比1・4倍以下となる人数を募集した。「不交付逃れ」という指摘に、大学は「経済的な理由もあるが、教育条件の実現を最優先した」と説明していた。
4月の教授会などで配付した常任理事会名の文書では、入学定員超過率の問題点について▽学部などの認可申請ができなくなる▽補助金不交付−の2つを明記したが、教育上の問題は書かれていなかった。
立命館大は「教育の問題は当然の前提として文書には書かなかった」としている。
一方、文科省は転籍募集について「法的には違反していないが、教育上の合理的な理由があるかどうかが問われる」(私学助成課)とし「転籍は学生本人の求めに応じて行うべきもので、入学後ただちに大学が募るのは入学者選抜の不公平につながる」(同)と問題視している。
補助金を交付する日本私立学校振興共済事業団(東京)も「人数の調整はやってはいけないと考えている」としている。
立命館大は過去にも1993年から99年にかけて国際関係学部など4学部で転籍を募集しているが、いずれも補助金不交付となる定員超過を解消できなかったという。
文科省は過去の事例についても説明を求め、事業団と協議して、大学全体の補助金交付について検討する。
私立大学等経常費補助金 日本私立学校振興共済事業団は国からの補助金を基に、学校法人に対して経常的経費を補助している。教職員や学生数などに応じた一般補助と特色ある教育研究に配分する特別補助があり、立命館大には2007年度、総額で51億6200万円が交付された。京都の大学で最も多く、全国526の4年制大学の中でも6番目の交付額だった。交付額トップは日本大で119億200万円。
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