入試案内・学生生活

試験内容

選抜者入学試験の内容(概要)

7月下旬の第1回目の試験の場合、受験者は180名位になります。先端大キャンパスで2日、東京地区で1日、試験を行います。試験は口頭試問だけ行います。5試験室でそれぞれ1名ずつ、計5名の試験が同時進行で行われます。各試験室は午前中に9名、午後9名の試験を行います。そのため、それぞれの試験日の午前、午後に分けて、それぞれのブロックで受験する45名を一つのブロックの受験生とします。

この受験生は指定の時間までに研究科玄関ホールで受付を済ませ、大講義室に入ります。ここで受付時に受け取った受験生調査表に、研究希望分野や希望講座を複数記入します。そして、各試験室の受験順に20分毎に試験監督教員が受験番号を読み上げますので、呼ばれた受験生は試験準備室へ移動します。ここで英語と基礎知識の問題を渡され、30分間で問題用紙の余白に解答を書き留めておきます。英語の問題に関しては、『英語試験と過去に出題された問題』 を、基礎知識の問題に関しては、『基礎知識問題の難易度』を読んで下さい。辞書はありませんし、持ち込みもできません。

次に、その解答の書いてある試験問題用紙を持って、事務官の指示に従って自分の試験室へ移動します。面接試験時間は20分間で、英語と基礎知識の試験を5分間、一般面接を15分間行います。試験官は3名です。まず、名前と受験番号を述べた後着席します。試験官が「すでに解答している英語問題の下線部分の日本語訳をゆっくりと読み上げて下さい」と指示しますので、解答を述べて下さい。次に基礎知識問題の解答を読み上げます。それから一般面接に移ります。

面接試験の例を示しましょう。まず試験官から「小論文に書いてある卒業論文の内容について簡単に述べて下さい」と指示されますので、3分程で概略を述べて下さい。試験官はあらかじめ皆さんの小論文を読んでいますので、ポイントを要約して答えて下さい。答えた内容について専門的な口頭試問が行われます。試問は3名の試験官から多方面にわたって行われます。卒論研究の内容に加え、その分野の基礎になる分野の修学度、研究への取り組み方、細胞生物学や分子生物学、生化学などの基礎科学の修学度、特に興味を持って勉強した分野があればその修学度等を聞きます。また入学後に取り組みたい研究分野の小論文を基にそれに関連した研究課題についても質問されます。なぜその分野に興味があり、どのような方向で研究したい、等について、専門用語を使って答えなければなりません。よく経験する悪い例は次のような場合です。

悪い例
[試験官:研究科に入学したらどのような研究をしたいですか?]
[受験生:地球環境の保全に興味を持っていますので、環境問題に取り組んでいる研究室に入りたいです。]
[試験官:環境問題の解決には、科学に何ができると期待していますか?あなたはどのような分野の科学を研究することで、その問題を解決しようと考えているのですか?]
[受験生:塩に強い植物をバイオテクノロジーで育種したり、砂漠の緑化とか、植物によるバイオレメディエーション等です。]
[試験官:では、塩積土壌でも植物が生育できるにはどのようにすればいいと一般に考えられていますか?また、適合溶質についていくつか例を挙げて、その内の一つについてその合成に関与する酵素の名前を一つ述べて下さい。また、その酵素はどのような反応を触媒しますか?]
[受験生:???]

機械工学や文学分野からの受験生にも同様に、卒業論文研究やこれまでに興味を持った専門分野についての質問をします。また、入学後の取り組みたい分野や研究課題について質問します。分野外からの受験であっても、生物系学部で使われる専門教科書についての知識は必要です。また、取り組みたい研究課題についても、上記のような例は論外です。

面接試験と採点基準

3名の試験官が個別に評価と採点を行います。一般面接での質問内容は、卒論や学部で修学したことやバイオサイエンス分野の学力等について、点数化します。さらに、基礎知識問題の得点を加算して、その受験生の得点とします。英語はバイオサイエンス関連の論文が読める程度の能力が必要ですので、その基準を越えていればOKです。英語の点数は専門の成績にまったく加味されません。

英語試験と過去に出題された問題

英語の試験は、バイオサイエンス関連の論文を無理なく読める程度の英語力があるかどうかを調べる試験です。 関係代名詞、分詞構文、不定詞、仮定法、常套句、長文などの理解力を見ます。 したがって、あまり抽象的な表現を多用した文章や、抽象概念を述べた文章は出題しません。 以下にこれまでに実際に出題した英語問題を掲載します。

The twentieth century has seen various radical changes in the field of education. Not only in the curriculums of school, collages and other traditional educational institutions, but also in the emergence of science museum. It is beyond doubt that contemporary people have a far more advanced understanding of what used to be the sole domain of scientists. It is also true that science museum have contributed greatly to this increase of knowledge.
20世紀は、教育分野での数々の激しい変革にみまわれてきました。高等学校、大学や他の伝統的教育機関のカリキュラムだけでなく、科学博物館の登場などです。現代の人々がかつては科学者に占有されていた領域に関するより進んだ知識を得ることができるのは疑いもないことです。科学博物館が知識の高まりに大きく貢献したことも事実です。

In 1986, biotechnologists discovered a process whereby coagulation factor VIII could be produced in the laboratory. This procedure involves the transfer of the human gene responsible for coagulation protein to hamster cells cultivated in tissue culture. This breakthrough was made possible by various in-depth studies of human DNA that are currently allowing biotechnologists to accurately identify the genes related to a particular illness. ( coagulation, 血液凝固 )
1986年に、バイオ技術者たちは研究室で血液凝固第8因子を産生できる技術を発見しました。この方法は、凝固タンパク質に相当するヒトの遺伝子を組織培養により培養されたハムスターの細胞に導入することが含まれています。この大きな進歩(ブレイクスルー)は、ヒトのDNAのさまざまな詳細な研究によってなされたのであり、このことによってバイオ技術者は今や特定の疾患に関係する遺伝子を正確に同定することができるようになったのです。

The automobile industry came into being in the 1880s in the sense that it was during this decade that the internal combustion engine was developed. But it was not until 1913 that Henry Ford made the first mass-produced Model-T Ford on an assembly line thus making the automobile accessible to a significant section of the population. ( internal combustion engine, 内燃機関 )
自動車産業は1880年代に出現しましたが、それは、内燃機関がこの10年間に開発されたという意味においてです。しかし、1913年にヘンリー・フォードが組み立てラインを使って最初の大量生産型のT型フォードを作るようになり、それによってようやく大衆の多くが自動車を手に入れられるようになったのです。

The automobile has contributed greatly to present environmental problems. Air pollutions can trigger asthma, bronchitis, and other respiratory diseases, particularly in children. Additionally, they have been associated with cancer, although no definite link has yet been found. Cars also produce nitrogen oxides that contribute to smog formation. ( asthma, ぜんそく、bronchitis, 気管支炎 )
自動車は現在の環境問題に大きく関わってきました。大気汚染物質はとりわけ子供のぜんそく、気管支炎や呼吸器系の疾患の原因と考えられています。加えて、明確な関連はまだ確かめられていませんが、汚染物質は癌にも関与しています。車はまたスモッグの原因となる窒素酸化物を排出しています。

Since the Industrial Revolution, acid rain has been present in the air. The heavy smog in cities and other heavily industrialized areas can be attributed to its effects. It is only recently, however, that we have begun to recognize the effects of acid rain in regions removed from urban areas.
産業革命以降、酸性雨は大気中に存在しています。都市部や高度工業化地域の濃いスモッグは、酸性雨の影響によると考えられています。しかしながら、都市部から離れた地域への酸性雨の影響が認識されはじめたのはごく最近になってからです。

Freshwater areas such as ponds, lakes, and rivers, are the first to exhibit adverse effect of acid rain. Other areas, such as forests and savannas, are comparatively slow to manifest the effects of acid rain on their ecosystems. This is due to the fact that the pollutant first has to be absorbed by soil.
最初に酸性雨の害が認識されるのは池、湖、川などの淡水地域です。これらの地域と比較すると、森林や草原などの他の地域では、酸性雨が生態系に与える影響は比較的遅れて出てきます。その理由は、汚染物質が最初は土壌に吸収されるという事実のためです。

Jupiter was first observed to have four satellites by Galileo in 1610. Those moons were named after their discoverer. These four moons are much larger than other satellites orbiting Jupiter.
1610年にガリレオによって初めて木星には4つの衛星があることが観察されました。これらの衛星は発見者の名前にちなんで名付けられました。これらの4つの衛星は木星を回る他の衛星よりもずっと大きいものです。

【下記の著書より許可を得て転載】
「 TOEFLテスト パーフェクト リーディング 」
発行所:株式会社 旺文社

基礎知識問題の難易度

基礎知識はバイオサイエンスの学部レベルの簡単な基礎知識問題が出題されます。具体的には、南江堂「エッセンシャル細胞生物学」(中村桂子他監訳)から10問の穴埋め問題がでます。通常、出題文の文意が通じるように、適当な単語を埋めてゆきます。教科書の前半から多く出題されますが、後半からも一部出題されます。受験者は前もってこの教科書を熟読し、受験の準備をすることを推奨しています。