「これでは生活できぬ」/保険料天引き開始
高齢・障害者ら悲鳴
後期高齢者医療保険料の年金天引きが十五日スタートした。県内市町村の窓口には、役所や金融機関の現金自動預払機で通帳の年金額を確認した後、保険料などについて問い合わせる高齢者の姿が目立った。天引き対象となった高齢者や障害者らは「これ以上引かれたら生活できない」など悲痛な声が相次いだ。
数日前に年金の天引き額の仮決定通知書を受け取った沖縄市の男性(80)は、保険料二万四千八百円がどう算出されたか疑問に思い、市の高齢・医療費助成課を訪れた。
前回までの年金額は二カ月で約十三万円。介護保険料と合わせ「これ以上引かれたら生活できない。年寄りは早く死ねと言わんばかり。友人には(徴収額の)けたを見間違えているのではないかと言われた」と憤る。
同市に住む別の男性(79)は、一回当たりの保険料が二万三千四百円。現金自動預払機で通帳記帳して、前回年金の振り込みがあった今年二月に比べて受給額が減っていることに気付いた。
年金は二カ月分で三十九万円余り。ぜんそくの妻と二人暮らしで、自身も血圧が高く内科と眼科に通院する。「住宅ローンも病院代もあって決してゆとりはない」
市の通知は難しくて読んでいないといい、制度自体もよく分からない。「どんな制度であっても、年金から天引きというのは疑問」と話し、「私一人が何を言ってもどうにもならない。国に任せるしかない」とあきらめの表情を見せた。
那覇市の安謝郵便局(知名孝美局長)に年金を引き出しに来た長嶺トシさん(79)は「市から通知が来ていたので心配はしていなかったが、やはり(受給額は)少なかった。高齢者の負担が重くなるのは困る。仕方ないんですかね」とあきらめ顔。
一方、午前九時すぎに一人で那覇市役所を訪れた那覇市の女性(81)は銀行に振り込まれた年金から現金を引き出し、「二カ月に一度の給料日。待ち遠しいってもんじゃない」と顔をほころばせた。
後期高齢者医療制度で天引きされた初回の保険料は二千四百円。これまで加入していた国民健康保険より四千円ほど安いといい、「自分にとって新しい制度はありがたい。でも国の言ってることは二転三転しているからこれからどうなるか。これ以上生活を苦しめないでほしい」と話した。