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【社説】

脱輪タイヤ事故 放置するな金属疲労

2008年4月15日

 走行中に脱輪したタイヤの恐怖がまた現実になった。タイヤを締めるボルトが破断しており、さびも出ていて金属疲労が一因とみられる。予測可能ともいえる事故を何度も繰り返してはならない。

 静岡県牧之原市の東名高速道で十一日、十一トントラックから脱輪した一本のタイヤが、高さ一・三五メートルの中央分離帯を飛び越え、対向車線を走っていた観光バスのフロントガラスを直撃した。この事故でバスの運転手が死亡、乗客七人が負傷した。

 脱輪したタイヤは直径一メートル、重さは百キログラムもある。脱輪後三百メートルも走って空中に舞い上がり、弾丸のような勢いでバスに当たった。

 この種の脱輪事故は決して珍しくない。二〇〇四年に北海道で大型車のタイヤが脱落し、歩道の保育園児ら二人を死傷させた。国土交通省によると、大型車の脱輪事故は九九年から〇七年までの間に二百六十二件も起き、大半はボルトの破断が原因とみられている。

 今度の事故は警察や国交省などで調査中だが、タイヤのボルト八本がすべて破断しており、原因は過去の事故と同じ可能性が強い。

 この十一トントラックは三カ月ごとに定期点検する義務がある。だが、トラックを運行していた産廃収集運搬会社は三カ月点検については知らなかったという。これほど安全意識が欠けた会社に運送に携わる資格があるのだろうか。

 タイヤのボルトは締めすぎや緩みすぎでも破断するが、近年は金属疲労によるボルトの劣化が原因とされるケースが増えている。

 金属部品はほっておいても一定年月がたてば疲労して抵抗力が弱くなる。ましてトラックのタイヤに使われるボルトには、過大な重力がかかる。時には過積載もあろう。こうした状態で高速道路や悪路を走れば、金属疲労の進む速度が通常より速くなるのは確実だ。

 トラック会社をはじめ、整備会社、運転手など関係者は、定期点検などにより金属疲労については十分予測可能であり、早め早めの部品交換が必要である。

 今度のボルトの一部にもさびが出ていたと伝えられており、運搬業者なら金属疲労を想定して部品交換しておくのが当然である。それを承知で走行していたとしたら、責任はさらに重大だ。

 運輸当局やメーカーも業界に対し、定期点検を厳守させ金属疲労への警戒を強めることが急務だ。

 タイヤが人の生命を奪う悲惨な事故を二度と起こさない対応を強く求めたい。

 

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