課徴金の適用範囲拡大や主導企業への割増率などを盛り込んだ独占禁止法改正案が今国会に提出された。違反行為への厳罰化は米国や欧州連合(EU)だけではない。改正案の審議と成立を急げ。
経済憲法と呼ばれる独占禁止法は二年前、課徴金算定率を大企業製造業で10%に引き上げるなど大改正したばかり。だが談合やカルテルなど昨年度の違反件数は二十四件と前年度比ほぼ倍増した。今回の改正は違反行為への抑止力強化が目的だ。
公正取引委員会がまとめた改正案の柱は、課徴金の適用範囲に「排除型私的独占」や「不当廉売」「優越的地位の乱用」「不当表示」などを加えたことである。
排除型私的独占とは、たとえばパソコンの基幹部品で圧倒的な市場支配力を持つ企業が代金割り戻しなどで競争相手を排除する場合である。これまでは違反企業へ排除命令を出すだけだったが改正後は課徴金を科すことができる。
不当表示の場合も一定の条件のもとで課徴金の対象とした。再生紙偽装問題では製紙メーカー八社へ排除命令を出す方針だが、これも今後は課徴金の対象となる。
厳罰化ではさらに、談合やカルテルなどで主導的役割の企業に対する課徴金を五割増しにする。大企業製造業なら15%となる。
一方、前回の改正で導入された課徴金減免制度は、三菱重工業など大企業が数多く利用するなど日本企業の行動を大きく変えてきた。そこで減免企業数を現行三社から五社に増やすことにした。
今後の課題は課徴金の水準だ。欧州委員会は昨年、カルテル行為があったとして日本企業に一千億円を超える制裁金支払いを命令した。日本は当該事業の売上高が基準だが欧州委は総売上高である。水準をめぐる議論が必要だ。
一方、公取委が行っている審判制度は二〇〇八年度中に廃止を含む見直しが付則に明記された。裁判の一審に相当する審判は公取委の職員や弁護士などが担当している。経済界には「検察官と裁判官が同じだ」と強い不満がある。
審判制度はこれまで公取委の公正さと信頼感で機能してきた。だが今後は司法に判断を委ねるべきだろう。すべての事案を司法に任せるかは意見が分かれる。これも国会で議論してもらいたい。
主要国の競争政策当局による国際会議が京都で始まった。不正行為への厳罰化は国際的な潮流であることを企業は銘記すべきだ。
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