費用がかかるとの理由で過去1年間に医療機関の受診を控えた経験のある人が3割に上り、低所得層では4割近いことがNPO法人「日本医療政策機構」(東京都千代田区)の調査で分かった。日本の健康保険の自己負担は原則3割で、負担ゼロも少なくない他の先進国より高く、受診を控える割合が多いとのデータもある。必要な医療を受けられずに死亡するケースもあり、低医療費政策の是非が問われそうだ。(2面に「医療クライシス」)
調査は1月、無作為抽出した全国の20歳以上の4000人に調査用紙を送り、926人から有効回答を得た。
体調が悪いのに過去1年間に受診を控えた経験のある人は31%だった。特に、低所得層(年間世帯収入300万円未満など)では39%に達する。高所得層(同800万円以上など)は18%、中間層は29%で、低所得層ほど受診を控えていた。
同機構によると、01年時点の海外の調査では、受診を控えた経験のある人は英国3%、カナダ5%で、皆保険制度のない米国ですら24%だった。
また、「薬を処方してもらわなかった経験がある」と答えた人も12%に上る。高所得層では2%だったが、中間層は11%、低所得層は16%だった。
自営業者らが加入する国民健康保険では6~69歳は自己負担が3割。会社員が加入する健康保険も小泉内閣時代に3割に上げた。一方、OECD(経済協力開発機構)の調査では、加盟30カ国中、英国、カナダなど10カ国は自己負担ゼロ。フランスは3割負担だが、社会的弱者や長期の病気は負担ゼロだ。
全日本民主医療機関連合会の調査では、国民健康保険証があるのに受診を控えて死亡した人が、昨年1年間に少なくとも4人いる。
日本の医療費はGDP(国内総生産)比8%(04年)。G7(主要7カ国)平均(10・2%)よりはるかに少なく、OECD平均(8・9%)も下回っている。
同機構の近藤正晃ジェームス・副代表理事は「低所得者でも必要な医療を受けられるようにするにはどうすべきか、国民的議論が必要だ」と話している。【河内敏康】
毎日新聞 2008年4月15日 東京朝刊