NICUの看護配置見直しを

 このほど開かれた「医療現場の危機打開と再建をめざす国会議員連盟」(会長・尾辻秀久元厚生労働相)の発足記念シンポジウムでは、医療関係者や患者団体代表ら9人のパネリストがそれぞれの立場から、医療の再建に向けた対応の必要性を訴えた。

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 青森県立中央病院総合周産期母子医療センターの網塚貴介氏は、新生児集中治療室(NICU)のベッド数が少ないため、本来は比較的軽症の新生児を受け入れる回復期の病床で、人工呼吸などの手厚いケアが必要なケースに対応せざるを得ない状況を明らかにした。また、夜勤看護師一人当たりが受け持つ新生児が全国平均で9.8人に上っている現状も指摘。これらが「ケアの低下を招いている」として、NICUの看護配置基準の抜本見直しを求めた。

 日本医師会常任理事の内田健夫氏は、「日本の医療水準が世界最高レベルなのは誰もが知っているが、医療費は先進諸国で最低。医療従事者が(医療現場を)献身的に支えてきた」と述べ、医療崩壊の最大の原因が極端な医療費の削減にあるとの認識を表明。その上で、今のような状況が続けば、すべての診療科で近い将来、医師不足が顕在化するとの見通しを示した。

 山形大医学部長の嘉山孝正氏は、医療費について「正しい情報が患者に届いていないのが一番の問題。情報を持っている省庁がきちんと方向性を示し、国会で話し合わないといけない」と述べた。また、医師不足への根本的な対応を図るには、1986年に閣議決定された医学部定員の削減方針を撤回する必要があるとの見方を明らかにした。

 一方、特定非営利活動法人(NPO法人)で乳がんの患者団体、ブーゲンビリア理事長の内田絵子氏は、「患者は医療の安全と質を求めている」と述べ、病院にとって都合の悪い内容も含めて情報を開示するよう現場に求めた。また、医療の再生を図るには、患者が参画する場でグランドデザインをつくる必要があるとの認識を示した。

■「医療従事者の免責、信頼回復なしには困難」
 シンポジウムの自由討論では、政府が今通常国会への関連法案提出を目指す医療関連死の死因究明制度がテーマになった。コーディネーターとして参加した土屋了介氏(国立がんセンター中央病院長)は、同制度の創設に際して医療従事者の免責を求める声がある点について、「医療従事者からはいつも真っ先にこの点が出るが、患者サイドから聞くとあり得ない」と述べ、医療側が自浄作用を発揮して信頼回復を図らなければ、こうした仕組みが社会に受け入れられることは困難との見方を示した。

 これに対し、昭和大病院副院長の有賀徹氏は「単純に免責すればいいというのではないのはその通りだが、問題は真面目にやっている人が委縮していくことをどう考えるかだ」と応じ、制度上の適切な対応の必要性を改めて訴えた。


更新:2008/04/14 20:03     キャリアブレイン

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08/01/25配信

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医師の山田規畝子さんは、脳卒中に伴う高次脳機能障害により外科医としての道を絶たれました。しかし医師として[自分にしかできない仕事]も見えてきたようです。