「人権擁護法」その5・・悪しき果実
            
さて、激論が続く人権擁護法ですが、
いろいろなブログを見てみると、
法律の条文解釈で喧々囂々の議論が起きてるようです。

それはそれで見ていて興味深く
大変勉強になりますが、
条文解釈のみでは法というものの本質を
見失ってしまうと思います。

要は、その法が成立したら
社会や国家に対してどう影響を与えるか?
どういうインパクトがあるか?
ここが問題なのでしょう。

私は前にも触れましたが、
法のもたらす影響というものは
法の字面だけで判断すべきではないと思います。

判断の材料は以下です。

1,法の条文

2,法の作成者の作成理念

3,法を推進する者の意図

4,社会情勢・国家情勢

これらを総合勘案して
法が国家・社会にどう影響をもたらすかを
考えるべきだと思います。

法の条文が綿密に定められていれば、
条文の内容のみで判断しやすいのでしょうが、
法が大雑把だったり、抽象的であったり、
定義が曖昧な概念が重要なキーワードとして
条文に盛り込まれている場合は、
2~4の要素が非常に大きな意味を持ってくると思います

この人権擁護法案の最大のポイントは
「人権侵害」の定義が曖昧なことです。
この曖昧さが2~4の因子に引っ張られるだろうと思います。

この観点に立って
今日は2つの柱を立てて書きます。

◇条文解釈のみで法は測れない

◇法案推進者の意図


<条文解釈のみで法は測れない>

法の字面のみで法は読み取れません。

例を挙げましょう。
1999年に成立した「男女共同参画基本法」です

日本にジェンダーフリーを
浸透させる基となったこの悪法。
ご存じの方も多いと思いますし、
私も過去の記事でさんざん取り上げてきました。

ジェンダーフリー考 その3・・保守の油断(前編)

あらためて、この法律の条文を見てください。

男女共同参画社会基本法

そこで設問です。
果たして1999年の時点で
この法律の条文のみを読んで
今のジェンダーフリーの社会への浸透ぶりを
想像できる人がいるでしょうか?

後から振り返るなら
この法律の問題点をいくらでも指摘できます。
法案作成のジェンダーフリー論者が
この法に盛り込んだ同思想のエッセンス。

 男女が均等に政治的・経済的・社会的及び
 文化的に利益を享受することができ・・

 社会における制度又は慣行が、
 性別による固定的な役割分担等を反映して、
 男女の社会における活動の選択に対して
 中立でない影響を及ぼすことにより、
 男女共同参画社会の形成を
 阻害する要因となるおそれがあることにかんがみ、
 社会における制度又は慣行が
 男女の社会における活動の選択に対して及ぼす影響を
 できる限り中立なものとするように
 配慮されなければならない。

この「男女が均等に利益を享受」の文言。
さらに「性別による固定的な役割分担等を反映して」
「中立なものとするように配慮されなければならない」
これらの文言がどれだけジェンダーフリーの浸透への
錦の御旗となったかが分かるでしょうか?

この一見、男女平等の理念を
書いてるだけのような条文を見て、
自民党議員たちは挙手賛成し、
見事にこの法案は可決されてしまいました。
で、その後の展開はご存じのとおり。

あの時点で、この法律の悪弊を見抜くには
上記に書いた4つの基準、
即ち、

1,法の条文

2,法の作成者の作成理念

3,法を推進する者の意図

4,社会情勢・国家情勢

これを総合勘案して読まないと
この法が社会にもたらすインパクトは想像できません。

ジェンダーフリーという思想について、
その定義、その淵源、思想を作った人たちの発想、
思想を推進しつつある者たちの意図。
そして法案作成者の作成理念。
また、この思想がいち早く流行った米国の実状。

こういうものを総合して考えないと
この法のもたらす影響力は
1999年の時点では見抜くことは不可能でした。

後知恵ならどうとでも言えるんです。
あの条文が悪い、この文言が良くないと。
でも当時、法案の内容を見た人間は
当の作成者と推進者以外は
この法案のもたらす影響力など見抜けなかったわけです。

男女共同参画がらみでもう一例をあげておきます。
埼玉県の「男女共同参画推進条例」。

埼玉県男女共同参画推進条例

これは上記の男女共同参画基本法を受けて
埼玉県が制定したものです。

この条例の中の第13条「苦情の処理」の中に、
男女共同参画がらみの苦情があった場合の
処理機関を作るということが書かれています。

かつて、この苦情処理機関の勧告が
埼玉県で激論を巻き起こしました。

平成13年3月、
埼玉県男女共同参画苦情処理委員会に対し、
「男女別学の学校は男女共同参画の精神に反している」
との苦情申し立てが行われました。

苦情処理委員会はこの申し立てを検討し、
平成14年、埼玉県教育委員会に対し、
以下の勧告を行いました。

 高校生活の3年間を一方の性に限ることは、
 人格形成からも、
 また男女共同参画社会づくりの視点からも問題である。  

 高校生という多感な時期に、
 異性と真剣に向き合い共に協力し合って
 問題を解決していく体験こそ重要である。  

 公立の高校として、男女の性差にとらわれることなく、
 個人の能力・個性を発揮していくため、
 男女別学校の共学化を早期に実現する必要がある。

時あたかも全国の自治体では
男女共同参画条例がラッシュのように制定され、
その影響下で男女別学を廃し、
共学に切り替える自治体が増えていました。

この苦情処理委員会の勧告に押された教育委員会は
埼玉県下の男女別学校の校長から意見を聞くと共に、
審議会を開き、共学化の検討を始めました。

これに驚いたのが別学の高校14校のOBと生徒たち。
これらの高校はそろいも揃って歴史の古い名門校。
彼らは猛烈な共学化反対の署名運動を行いました。
結果、27万の署名が集まり、
教育委員会は共学化を断念しました。

ここらへんの経緯は非常に興味深いのですが、
本論ではありませんので詳しくは書きません。

この苦情処理委員会というのは、
たったの3人です。

◇深尾 凱子 
 埼玉短期大学教授国際コミュニケーション学科長

◇栗田 和美  弁護士

◇松本 輝夫  弁護士

この3人が「共学化!」と決めて
古くからの14の伝統校を変えようとしたわけです。

その根拠となる埼玉県男女共同参画推進条例の
第13条「苦情の処理」をここに掲載します。

 知事は、県が実施する男女共同参画の
 推進に関する施策若しくは
 男女共同参画の推進に影響を及ぼすと
 認められる施策についての苦情又は
 男女共同参画の推進を阻害する要因によって
 人権が侵害された場合の事案について、
 県内に住所を有する者又は在勤若しくは在学する者、
 (次項において「県民等」という。)からの
 申出を適切かつ迅速に処理するための
 機関を設置するものとする。
 
 二  県民等は、
 県が実施する男女共同参画の推進に関する施策若しくは
 男女共同参画の推進に影響を及ぼすと
 認められる施策について苦情がある場合、
 又は男女共同参画の推進を阻害する要因によって
 人権を侵害された場合には、
 前項の機関に申し出ることができる。
 
 三  第1項の機関は、前項の規定に基づき、
 苦情がある旨の申出があった場合において、
 必要に応じて、前項の施策を行う機関に対し、
 説明を求め、その保有する関係書類その他の記録を閲覧し、
 又はその写しの提出を求め、必要があると認めるときは、
 当該機関に是正その他の措置を
 とるように勧告等を行うものとする。
 
 四  第1項の機関は、第2項の規定に基づき、
 人権を侵害された旨の申出があった場合において、
 必要に応じて、関係者に対し、
 その協力を得た上で資料の提出及び説明を求め、
 必要があると認めるときは、当該関係者に助言、
 是正の要望等を行うものとする。


果たしてこの条例が出来た時に、
この条文を読んだ人の中で、
この「苦情処理委員会」のたった3人の人物が、
あわや県の伝統校を共学に変える寸前にまでいくという、
権限の強大化・肥大化を想像できた人がいるでしょうか?

 必要があると認めるときは、
 当該機関に是正その他の措置をとるように
 勧告等を行うものとする。

この文言です。
これで想像がつきますか?

法が国家・社会にいかなるインパクトをもたらすか?
それは区々たる条文解釈のみでは
読み切れないという実例です。

歴史を俯瞰してみるならば
その種の実例はいくらでも出てきます。
作成当時の条文解釈だけでは
全く予測不能の影響を法律が国家・社会にもたらす。
歴史の授業でいくらでも習ったと思います。

たとえば大日本帝国憲法。
あの悪名高き「統帥権」条項。
もっと歴史をさかのぼれば
寛政の改革で松平定信が打ち出した「棄捐令」。
さらには古代律令制国家の崩壊の元となった、
「三世一身法」「墾田永年私財法」など。

条文を書いた小役人が予想も出来なかった影響を
これらの法は社会に対して与えました。


<法案推進者の意図>

この人権擁護法は
素案は人権フォーラム21という団体が準備し、
それを基に法務省の人権擁護推進審議会が文面を作りました。

この「人権フォーラム21」という団体は
今はもう解散していますが、
団体の代表者であり、北朝鮮の主体思想の信奉者、
武者小路公秀・中部大学教授以下、
労組役員、大学教授、在日コリアン人権協会、
解放同盟幹部、日教組、弁護士、等々等、
なかなか素晴らしきメンバーが揃っています。

人権フォーラム21

人権フォーラム21役員体制

そして法案の推進者は
自民党の古賀誠氏と公明党。
さらにその背後の部落解放同盟と創価学会が
熱心に推進するという構図です。

私は思うのですが、法の条文を解釈して
「この法が成立したら、こういう悪影響があるよ」と言っても、
別段、証拠があるわけではありません。
「これが証拠」と取り出して見せることなどできません。

ある意味、法の社会的影響の検討というものは
一種の未来予測と同じで
一旦、解釈が分かれたら水掛け論に近いものがあります
堂々巡りで議論に決着がつくとは思えません。
自説の正しさなど、実際に法が成立してみないと
判定ができないものです。

しかし、一つ確かなことがあります。
それは法案を推進する者の行状です。

法案を熱心に推進する者が
果たして良き者か悪しき者か?
これは過去と現在の彼らの行状を見れば一目瞭然でしょう。

部落解放同盟と創価学会。
これが良き者か否か?
心正しき高徳な団体か否か?
ハイ、答えは明白です。

私が言いたいのは、
悪しき者が差し出す食べ物は口に入れるな、ということです。
普段の言動が悪辣な者が「食べなさい」と食物を差し出しても
腹中に入れてはいけません。
これは子供にでも分かる理屈だと思います。

悪しき者の差し出す、善悪定からぬ怪しい果実。
これは口にしてはいけません。
この人権擁護法案の条文の解釈が
善悪いまいちよく分からないのならば、
それを差し出す者の行状で判断することです。
彼らの普段の行いで判断することです。

悪しき者の果実を食べてはいけません。
過去において人を傷つけ、誹謗し、
多くの人を自殺にまで追い込んだ団体が
熱心に推進する法など、ろくなものではありません。

どうか、法の良否というものを
条文の字面のみで判断しませんように。
多くの複合した要素で総合勘案しますように。

そして判断に困ったら、そこから一歩距離をとって
法の区々たる条文から離れて、
法を差し出している人間を観察することです。

そうすればこの法案を口に入れることが
日本にとって良きことか悪しきことかは
明白になると思います。




人権擁護法案を危惧する国民協議会
 人権擁護法案を考える市民の会


人権関連法案突然の再浮上:仕掛けは解放同盟


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「人権擁護法」その4・・「糾弾」という名の私刑
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「人権擁護法」その1・・天下の雑法。

「人権擁護法を考える緊急大会」ミニレポート。




by misaki80sw | 2005-04-11 00:51 | 人権擁護法
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