minimamoralia

2008-01-16

意味なんてないさ 01:18

 それにしても、わたしわたしわたしたわたしわたしたわしたわしたわしって…。亀の子か!

 ま、口でもごもごと唱えているうちに、意味がないのかあるのかわからなくなってくるようなことばはいいもんだ。「テクマクマヤコン」とか「ナムアミダブツ」とか「ハイディハイディハイディホー」とか「アンポフンサイ」やら「ボンバカランボンバ」やら「ミニマモラリア」やら。「わたし」ってのもそんなもののひとつなのかもしらん。ダ!ダ!

D

イェンベレ、べンベーの神よ イェンベレ、ベンベーの神よ

哀れなちっちゃな黒くて間抜けな神


  エル・ネグロ・ベンボンが殺された

  間抜けな黒人が殺された

  みんなで夜も昼も泣いているよ

  だって、ちっちゃなネグロ・ベンボンは

  世界中から愛されてたんだもの

  だって、ちっちゃな黒い神様は

  世界中から愛されてたんだもの


おまわりがやってくる

喧嘩っ早い男をつかまえてくぞ

そのおまわりの中にも

やっぱり間抜けがいるんだけどな


悪い運命に触ったせいで

お縄の目に遭っちまった

悪い運命に触ったせいで

お縄の目に遭っちまった


聞かれるのさ、どうして殺したんだって

理由はなんだ、言ってみろって

答えるのさ、喧嘩屋は

「あんまり間抜けだから殺っちまった」

警察は黒い女神を隠したよ 

で、かの女は言うのさ


  理由なんてないさ

  意味なんてないさ*1

"El Negro Bembon" Cortijo Y Su Combo


 呪術と科学、幻想と現実、アフリカとアメリカが混じりあうことなく交錯する不吉なサンフアンの夜を、イスマエル・リベーラは息を切らすこともなくフルスピードで駆け抜ける。ラファエル・コルティーホのティンバレスはそれを煽り立てるように響き渡り、ラファエル・イティエールやエディ・ペレスたちがまるで捕物帳のように追いかけまわす。

 たった3分の間に一度目の悲劇と二度目の喜劇が何度となく繰り返されて、そのまま何が何だかわからぬうちにハラホロヒレハレと崩れ落ちる完璧なスラップスティック。ギラギラと黒光りする植木等ハナ肇。「意味なんてないさ!」のリフレインに身をまかせているうちに、たしかにそこに何かが見えてくる。それはもしかしたら意味を奪われたまま生きているものたちの姿なんだろうか。

 どうして、グリール・マーカスは「ポピュラー音楽におけるダダ」を考察したとき*2、かれらの名前を挙げることができなかったのか。*3

 それにしても、「陽気なラテン音楽」なんていう何の意味もないことばは日本語から消えてなくなってもらいたいものですな。

El Sonero Mayor

El Sonero Mayor

*1:ベンベーはカリブ圏の黒人が信仰するアフリカの神。それと俗語のベンベー=唇の厚い人、間抜けの意が語呂合わせされている

*2:"Lipstick Traces"。amazon.comのレビュー見ると、最初の書評がテリー・イーグルトンだわ

*3:要するに、グリールは誠実なリベラルだけど、退屈なモダニストで隠れレイシスト。いつまでもケイジンやフィードラーの物真似やってんじゃねーよ。やっぱりギュラ先生最高!という話

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