年金記録の「5000万件の漏れ」は、安倍内閣の支持率急落、参院選敗退という致命傷になったのはご承知の通り。記録漏れを巡る社保庁職員の「いいかげんさ」は当時、これでもかというほど、マスコミに流れた。実はその情報源は社保庁改革の阻止を狙った社保庁自身だったという“自爆テロ”説が、今も安倍内閣の主要メンバーに信じられている。正否はともかく、そんな「怨念」が議連を突き動かしている。
議連では今後、社保庁の過去の歴史をさかのぼって、地方の社会保険事務所の組合が、いかに中央の社保庁と対立してきたかを解明していくよう、再生会議に求めていく方針だという。組合の専横が職員の特権を生み、服務違反の温床になったという論理立てだ。
自民、「攻守逆転」の口火目論む
年金問題では守勢一本槍の政府与党だが、「ヤミ専従問題で国民の怒りに火がつけば、攻守逆転もあり得る」(年金改革議連のメンバー)というのが、自民議連の読み。というのも旧自治労国費評議会など労働組合は、言うまでもなく民主党の支持母体だ。組合がらみのスキャンダルが繰り返し出てくれば、民主党を守勢に追い込むこともできる、というのだ。
民主党は、服務違反については、厳しく究明すべきだという「是々非々」の姿勢を今のところ保っている。日銀総裁人事、ガソリン税に続いて次は年金問題で福田康夫内閣を追い詰める構えを見せているが、その追及の手が緩むことにならないか。
社保庁は2010年に廃止され、非公務員型の組織である日本年金機構に移行される。再生会議はその基本計画をまとめる役割を担っており、近く報告書を出す段取りだ。政治の綱引きの中で、社保庁の闇を解き明かすことができなければ、結局そのツケは国民に回ってくる。
日経ビジネス 2008年4月14日号14ページより