中国や台湾で、日本の都道府県名や地域名、特産品の商標登録出願が相次いでいる。高品質で人気が高い日本の農産物などのブランド力を、将来的に商売などに利用する意図があるとの見方があるが、詳しい実態は不明。日本から進出した企業などが名称を使用できないトラブルも発生、「コシヒカリ」を「新潟産」としてしか販売できない事態も起き、今後も広がる懸念がある。事態を重く見た農林水産省は農産物の知的財産を担当する専門課設置を決定、特許庁も調査を始めた。
毎日新聞やジェトロ(日本貿易振興機構)が確認しただけでも47都道府県中38都道府県(中国=36都道府県、台湾=29都道府県)の名前が、現地の企業や個人などによって出願されたり既に登録済みだった。政令市名や、「松阪牛」「鳴門金時」など特産品名の出願も確認された。「松阪牛」については、本来の産地である三重県松阪市が現地企業に登録を依頼したという。
中国や台湾の商標法では本来、広く知られた地名は「公共財」として商標登録できず、「東京」などは却下されている。しかし、台湾では昨年12月、現地企業が「さぬき」を商標登録していたため、日本の讃岐うどん店が「さぬき」の看板を下ろす事態に。「鹿児島」は中国で「広告、事業の管理」分類で登録出願されており、県が進める上海でのアンテナショップ計画で「鹿児島」を店名に使用できない恐れがあるとして、異議を申し立てた。
「防御」に乗り出した自治体もある。山形県は名前ではないが、山をかたどった輸出用シンボルマークを韓国、台湾、香港で登録し、中国にも出願中。中国にリンゴを輸出している青森県も、シンボルマークの商標登録を目指し、今年度当初予算に約750万円を計上した。【町田徳丈、北京・大塚卓也、台北・庄司哲也】
▽知的財産に詳しい東京理科大大学院の生越由美教授(知財政策)の話 日本産品は、おいしく、丁寧で、きれい、安全と評価され中国や台湾で人気が高い。高価格でも富裕層は買い求める。半面、日本の生産者や関係者には日本産品が付加価値が高いという認識が低い。本格的に特産品の輸出を考えるなら、早急に海外で商標登録をする必要がある。
【ことば】商標登録 商標は、商品を販売する際などに、商品の名称に付ける文字や、図形、絵のマークなど。中国の商標法では、商標出願後、公告期間が3カ月設けられ、期間中に異議申し立てがない場合は登録される。登録すると商標を独占して使用することができる。商標は一度取得すると10年間有効で、更新が可能。
毎日新聞 2008年4月13日 2時30分(最終更新 4月13日 2時30分)