[連載] 赤裸々中国――これが15億人の素顔だ!

第3回 富裕層狙いで倒産続出! もう始まっている中国の不景気

 
2008年3月31日
 

北京在住7年目に突入した作家、谷崎光が、怒涛の中国的日常をレポート。
中国といえば、餃子とオリンピックだけではありません。
お約束の「騙し騙され」話から、高所得者層ビジネスの実態、中国企業の雇用事情まで、
爆笑と戦慄の中国情報をお伝えします。

(月2回更新)

 

谷崎 光
たにざきひかり●中国貿易商社勤務を経て作家に。商社時代の中国とのバトルをコミカルに描いた『中国てなもんや商社』(文春文庫)は松竹で映画化もされた。他の著書に『てなもんや中国人ビジネス』(講談社)など多数。最新刊は『北京大学てなもんや留学記』(文藝春秋)。2001年から北京大学経済学部留学等を経て、北京在住。中国との付き合いは騙し騙され20年になる。最近始めた趣味は漢詩。中国製ニセ筆ペンを持ち詩作に励む日々。

著者ブログ:
http://blog.goo.ne.jp/tanizakihikari
 

「ドカーンと落ちこむのはオリンピックの後だ!」
「いや、上海万博まで持つ」
 いろいろささやかれてきた中国経済だが、住んでいる実感として景気の停滞はもうとっくに始まっている。

福田首相夫人も訪れた高級デパート「新光天地」。ブランド品売り場は、冷やかし客がほとんどのショールーム化している。


 今、北京を歩いて目に着くのは、高額消費を狙った店に閑古鳥が鳴く姿である。
 たとえば「中国には高額所得層がわんさかいる!」的なフレーズに惹かれてやって来ただろう日本、台湾、中国合弁の高級デパート『新光天地』。
 ずら~と並んだブランド品を眺める客は多いが買う客はわずか。「高額所得層」を見込んで3階ブチ抜きで店舗を出したFAUCHON(フォション/フランスの高給食材店)は、一日に買う客が10人に満たず、という現実に中国側の代表はすでに逃げ出したそう。
 そして郊外に行けば「あのレストラン、やっぱりつぶれたよ!」の話をよく聞く。倒産するのは新興層と当地の官僚接待を狙っての、大型高級レストランが多いが、小金を持った層の財布の紐は固く、堅実に安レストランに通い、かつ企業の接待は減った。
 万里の長城が一望できる郊外の外資系高級別荘・ホテルリゾートでは、駐車場に車も少なく宿泊客は雑誌を見たような外国人客がまばらにいるぐらい。資金不足か、ひとつが体育館ほどある別荘の維持も行きとどいておらず、あちこち錆び、花壇の手入れも今イチ。中国人に言わせると「保安員の身長が揃ってないのは金がない証拠」(!)なんだそう。

3階ブチ抜きで開店したフォーション。客より店員が多い日々に、中国側代表は既に逃げ出したとか。

 もちろん高級でも流行っている店は流行っているわけだが、それはバブル狙いではなく通常の経営の勝利なのである。
 景気がいいのはオリンピックに向けての公共投資だけだが、それすら皆「で、これ終わったらどうなるんだ!」。
 中小企業経営者たちの嘆き節も、年度決算の春節(2月の旧正月)を過ぎてさらに高くなった。なった。「大企業が、新規の仕事を保留している」「材料、人件費が上がって利益が出ない! 」。街に漂うのは行き止まりの停滞感なのである。
  そもそもこの景気停滞感の原因は、
 (1)いわずとしれた元高ドル安。中国が過度に頼る輸出を直撃した。
 (2)労働法が改正され、人件費が上がりコスト高。
 (3)政府が不動産価格の上昇を抑えた。「経済房」と言われる庶民用の安い部屋の投資用転売5年間禁止。乱投資防止に所有二つ目のマンションからは頭金を40%にした。上昇を狙いローンローンでいくつも買う人、多かったからね。貸しだして自転車操業で支払いし、上がったところで売り飛ばす……はずが、この法律で売れなくなった人も多い。
 (4)金融市場のバブル崩壊。株もガガーンと下がった。

小金持ちに人気のプチ高級サウナ「8号温泉商務会館」。ちょっと豪華な食べ放題付きで158元(2300円)と、フトコロにも優しい。


 もともと中国の企業は大から小まで過剰競争の自転車操業で、体力はそんなにない。一番乗りが儲けると法律無視で群がって市場を食いつぶすのが常、かてて加えて、この数年の投機熱はすさまじく、どの社も借りたお金で不動産投資していた。上昇が止まり転売できなければ利子だけが膨らむ。そもそも物はダブついているのである。
 そして外国人には理解しにくい中国人の消費行動がある。
 上から下まで値段の研究に余念のない中国人、お金持ち層はとっくに初期の高級品&ブランド狂乱を終え、「海外旅行の時に買うもんね~」になっているのである。海外旅行はどの国へのツアーも大好調。
 これは中国国内の高級品店が「客の金はどうせあぶく銭。ものを知らない奴は騙せ!」とばかりに、最初にバカ高い値段をつけたのも悪い。高級服飾なんて、同じ物、品質でも銀座のデパートのほうが今なお、はるかに安い。

味はともかく「お得感」で人気の食べ放題。

 小金持ち中間層は、今は様子見である。家を買うか、車を買うか、お金を握りしめたまま無駄遣いはしない。この層にバカ受けしているのが100~200元(1500円~3000円)程度のプチ高級食べ放題や、食べ放題付きプチ高級サウナ。「お得感」があるし、一点豪華消費ならば「食」に走るのが大阪人、じゃなくて中国人というもの、食べ放題に群がる中国人の取り皿の上にはこれでもか、これでもかの『蟹の東京タワー』がそびえたつ。他、安くておいしいレストランは現在ももちろん大盛況である。

 そして大多数を占める庶民層。中国のこの層は永遠にお金とは縁がない。
 逆に北京はオリンピック便乗で家賃が異常に上がり、物価や公共料金の上昇もすさまじい。労働法の保障分、賃金も引かれたりし、生活はむしろ苦しくなっている。
「正当な仕事で朝から晩まで働いている奴が、家の一軒も永遠に買えない状態なんて続かないよ!」(中国の若者)というのは正しいけれど、でもこれが中国の現実。
 3月の中国の国会、『両会』で温家宝首相が強調したのは「今年は経済がもっとも困難な一年になる」である。
 人口が多い=中国巨大市場はそりゃ簡単に言えばそうだが、日本人が15億いるのとはわけが違う。見極めは、中国人たちでも難しいのである。

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