樹齢は450年以上と推定される山梨県北杜市武川町、萬休院(杉浦道彦住職)の国指定天然記念物の「舞鶴の松」が松くい虫による被害で枯死(こし)し、26日、根本から伐採された。初夏には松くい虫が飛散し被害が拡大する心配があるためで、文化庁の許可を受けて実施した。杉浦住職、檀信徒総代会、地元住民らが作業を見守り、寺と地域のシンボルで観光名所だった松の伐採を惜しんだ。
舞鶴の松はアカマツで、本堂前の日本庭園にある。傘状の枝が階段状になり、全体の樹形が優美で、ツルが羽を広げた姿にいることから名付けられた。根回り4メートル、樹高9メートル、総枝回りは74メートルを誇った。
長松山萬休院は釜無川と大武川に挟まれた高台にあり、大武川を挟んだ高台にある国指定天然記念物「山高の神代桜」とともに、長野県内をはじめ多くの観光客を集めてきた。訪れる時期は春が最も多く、最盛期には1日1000台以上を数えたという。
2006年10月に1本の枝が枯れ、松くい虫の被害が見つかった。昨年8月にはすべての葉が枯れ、枯死が確認された。放置すると周辺の松林に被害が拡大する恐れがあるため、同寺は文化庁に国天然記念物の指定解除を申請。現状変更の伐採許可を受けた。
同寺は25日夜、本堂でお経を上げ、寺とともにあった松を弔った。
伐採は午前中に主要な枝を切り落とした後、午後から、根本にチェーンソーを入れて一気に切り倒した。太い枝も中心部は松くい虫被害で空洞になっていた。
杉浦住職(74)は「寺がいまあるのは松のおけげ。伐採は残念だが、やむを得ない」と涙ながらに語った。檀信徒総代会の日向勝代表(66)も「中が空洞では生きられない」と肩を落とした。
舞鶴の松は2代目で、初代アカマツが本堂の火災で燃えたため、近くの山から持ってきたとされている。同寺と総代会は国指定天然記念物の舞鶴の松があったことを示す掲示板を建てる計画で、3代目も植えたいとしている。