新入生や新入社員の歓迎会があちらこちらで行われているが、飲酒を強要されたり、いわゆる「一気飲み」をさせられるなど、むちゃな飲酒による健康被害が心配されている。むちゃな飲酒は命にかかわる問題だとして、飲ませる側の意識改革を、の声が上がっている。
渡辺病院(鳥取市東町三丁目)の山下陽三診療部長は「日本人の約四割は下戸の体質。飲めるといっても、大量に飲むと健康被害がある」と説明。「空腹時の飲酒や短時間に大量の酒を飲むのは絶対にしてはいけない。急性アルコール中毒で呼吸機能が低下したり、嘔吐(おうと)物をつまらせるなど死亡につながる危険もある」と警告する。
鳥取県内の各消防局によると、二〇〇七年の一年間に急性アルコール中毒の疑いがあるとして二百九件の救急出動があった。年齢別の統計がある中部と西部の消防局管内は九十四件で、そのうち十代と二十代が三十四件。若年層の飲酒事故防止は課題の一つだ。
鳥取大学は、届け出のある全サークルに対し、新入生の歓迎会では酒を出さないことを確認。鳥取環境大学では、飲酒運転と未成年者の飲酒が禁止されていることや一気飲みを強要しないよう指導している。
「新入生や新入社員がむちゃな飲酒の標的になりやすい。上下関係があると、飲酒を迫られても新人は断りづらい」と指摘するのは、イッキ飲み防止連絡協議会事務局(東京都)の今成知美さん。同協議会は、飲酒の強要などを、飲酒にまつわる人権侵害「アルコールハラスメント(アルハラ)」と定義して、その撲滅に取り組んでいる。
同協議会によると、飲酒に絡む死亡例が全国で過去二十五年余りに百件以上あったという。今成さんは「酒をつぎ合い、みんなで酔わなければならないとする風習があるが、飲まない人も楽しめる席にしなければならない。飲み会の主催者は、飲まない人が飲酒を断りやすい手段を用意したり酔った人を放置しないなどの配慮が欠かせない」と訴える。