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【明日へのセーフティーネット】再生の手がかり(1)パンドラの箱 (1/2ページ)
このニュースのトピックス:「明日へのセーフティーネット」
漂流する制度改革論議
中央官庁が集まる東京・霞が関の高層ビル会議室。平成19年11月30日、生活保護費の引き下げ反対を訴え、車いすの若者らが「ぼくたちははたらくところはないよ」と書かれたビラを来場者に手渡していた。この日、会議室では厚生労働省の有識者研究会「生活扶助基準に関する検討会」が開かれ、最終報告がまとめられた。
最終報告は、「現行の生活扶助は、低所得者の実際の生活費より高めになっている」とし、全国消費実態調査などのデータをもとに生活扶助基準の引き下げを容認したともとれる内容だった。この時は、「骨太の方針2006」などで生活扶助基準などの見直しの布石を打ってきた政府は最終報告を根拠に、基準引き下げに踏み切るというのが大方の見方だった。
しかし、政府・与党は、早々に平成20年度からの大幅な引き下げを見送る方針を固めた。「格差問題」が広がりをみせるなか、生活保護費の引き下げは「弱者切り捨て」と反発を招くことが必至で、与党内に「ねじれ国会という政治状況では政権がもたない」と慎重論が広がったからだ。
「生活保護はパンドラの箱」と厚労省幹部はいう。国民の最低生活の物差しになっている生活保護の生活扶助基準は、最低賃金や地方税の非課税基準、公立高校の授業料免除基準などと連動している。基準の見直しは、低所得者世帯の生活に直接跳ね返ってくる。それが見直しに手を付けられない要因でもある。
しかし、今の生活保護制度が貧困対策のほぼすべてを一手に引き受けている点には、疑問の声が多い。「困窮するすべての国民の最低限度の生活の保障と自立助長」を第1条に掲げる生活保護法だが、受給者の高齢化が急速に進み、実際には「入ることも容易ではないが、そこから自立し、出ることも困難」になっているからだ。