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問われる腎移植

聴聞会 徳洲会側が対決姿勢

手続き不備など追及

 「手続きが違法だ」「法律にのっとっている」――。愛媛社会保険事務局が25日に開いた宇和島徳洲会病院(愛媛県宇和島市)の聴聞会は、徳洲会側が手続き面の不備などを追及して紛糾。保険の不正請求に関する意見聴取に入れないまま終わり、次回に持ち越しになるなど、徳洲会側の対決姿勢を強く印象付けた。万波誠医師(67)は、一度は聴聞会出席のため病院から同事務局に向かったが、「中止」の連絡で引き返した。


報道陣に囲まれる病院側の弁護士ら(25日午前9時29分、愛媛社会保険事務局で)

 午前8時半ごろから、能宗克行・徳洲会グループ事務総長や貞島博通院長、「利害関係者」として出席した患者ら計二十数人が厳しい表情で次々と松山市の同事務局に到着。徳洲会側は聴聞会の公開を求めたが拒否され、同10時に非公開で始まった。

 聴聞会では、厚生労働省職員1人が出席したことに、徳洲会側が「法律上、参加資格がない」と抗議。職員が退席したが、徳洲会側は「出席の根拠を明確に示すべき」と説明を求め続け、約2時間で打ち切られた。途中、男性患者が立ち上がって「患者の命がかかっているのでしっかりと審議してもらいたい」と訴えるひと幕もあったという。

 古元大典・同事務局長は厚労省職員の出席について「十分な説明をするために共同監査の一員として入ってもらった。法律上は問題ないが、聴聞を進めるために退席した」と説明した。

 聴聞会終了後、患者団体「移植への理解を求める会」の向田陽二代表は「命がかかっている問題なのに、社保事務局の軽率さばかりが目立った」と批判した。

「患者のため」 地元賛否 「配慮を欠く」

 徳洲会病院の保険医療機関指定取り消しの処分方針については、患者や地元住民らから賛否の声が上がっている。

 夫婦で徳洲会病院に通っているという宇和島市の真珠母貝養殖業の男性(52)は「国は患者のことを考えていない。捨てる腎臓が利用でき、患者が一人でも楽になるならいいではないか」と訴え、万波医師の執刀で腎移植を受けた高知県黒潮町の米津初美さん(52)は「たとえ10割負担になっても万波医師に診てもらいたい」と話した。

 別の主婦(48)は「患者が一番不安なのは手術の危険性。先端医療ならなおさらで、インフォームド・コンセント(説明と同意)を怠った万波医師は配慮が欠けていた」と苦言を呈した。

 2000〜01年に病気腎移植を受け、その後死亡した男性(当時29歳)の母親(62)は「万波医師は私たち家族に病状を十分説明してくれなかった。不信感が募っている」と打ち明ける一方、万波医師の保険医登録の取り消し方針には「行き場を失う患者さんの気持ちを思うと、万波医師を頼りにしていた息子の姿と重なり、胸が痛む」と複雑な胸中を明かした。

2008年02月26日  読売新聞)
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