「早いもんだね」。ちょうど十年前、首相官邸で橋本龍太郎首相が語った言葉が印象に残っています。訪れた本州四国連絡橋公団(当時)の幹部から瀬戸大橋が開通十周年を迎えたと告げられ、しみじみ語りました。
さらに十年を経て今月、二十周年を迎えました。きのうは式典が開かれ、きょうは記念イベントです。まさに、もうそんなに歳月を費やしたのか、との感があります。
瀬戸大橋は当初、三十年間余りで通行料金が無料化される計画でした。その約三分の二が経過したわけです。しかし、無料化が視野に入るどころか、割高感から橋を渡りにくい状況は、いまだに変わりません。
長年の労苦や多額の費用をかけて悲願の橋ができたのに、利用できないのはどう考えてもおかしい。瀬戸大橋の二十年が投げかけているのは、わが国の社会資本整備の壮大な矛盾でしょう。
その閉塞(へいそく)状況を打ち破れるか、今、岐路に立っています。鍵を握るのは、国会の焦点となっている道路特定財源です。
瀬戸大橋を含む高速道路は基本的に、ドライバーがガソリン税などで負担した道路特定財源は充てられず、借金によって造られました。そのために借金が膨らみ、返済資金として通行料金が異様に高くなりました。
特定財源を高速道路の借金返済に充てれば、通行料金の水準の大幅な引き下げは可能です。しかし、国会を取材していても、そんな道路政策の議論は欠けています。
瀬戸大橋二十年の教訓を生かし、特定財源問題を高速道路値下げにつなげていくべきではないでしょうか。
(東京支社・岡山一郎)