ほのかに漂ってくる樹木の香り、風を受けてそよぐ枝のざわめき。森に足を踏み入れ、心が癒やされた経験は誰にもあるだろう。
林野庁の外郭団体・国土緑化推進機構(東京)が、「森の力」をストレス解消や健康増進に役立てる「森林セラピー基地」として岡山県新庄村を認定した。中国地方では山口、島根県に続いて三カ所目になる。
認定のため専門の研究機関に委託した昨年の実証実験の結果が興味深い。森林に十五分いただけで、脈拍が低下し、ストレスを示す唾液(だえき)中のホルモン濃度が下がった。緊張や不安を和らげ、元気にする効果もあった。森林の癒やし効果が科学的に確認できた。
新庄村は、鳥取県と境を接しており、村内にある毛無山(標高一、二一八メートル)は、県内最大のブナ原生林が広がる。単独村制の維持を目指す同村は、豊かな自然を地域活性化に生かそうと、二〇〇五年度から森林セラピー事業に取り組んでいる。
毛無山のふもとに約二キロのウオーキングロードを整備して、森を案内する森林トレーナーの養成にも力を入れてきた。セラピー基地認定で都会から訪れる人々を受け入れる体験プログラムの充実にも弾みがつこう。
五月に入れば森が最も美しくなる新緑の季節を迎える。森を歩いてリフレッシュしたくなった。