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-----Japan On the Globe(179)  国際派日本人養成講座----------
          _/_/   
          _/     Media Watch: 3度目のお先棒担ぎ
       _/_/        
_/ _/_/_/       歴史教科書つぶしに奔走する「中国の友人」たち
_/ _/_/       の無法ぶりは、真の日中友好を阻害している。
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■1.不合格工作の無法ぶり■

     あなたが、ある大学の入試で小論文試験を受けたとする。 
    ところが、その大学の入試委員会の一人は、あなたは思想的に
    問題が多いので、絶対に合格させてはならない、との手紙を他
    の委員に出していた。
    
     書き上げた小論文は、あなたの名前を消して採点に回された
    が、どういう訳か、そのコピーが外部に流出して、キャンパス
    の立て看板に堂々と張り出され、学生集会では「こんな偏向し
    た内容の小論文を書いた奴は、絶対に合格させてはならない」
    とアジ演説をしていた。
    
     学生新聞も、あなたの小論文を批判して、こういう思想偏向
    した学生を合格させたら、他大学との関係もまずくなるから、
    合格させてはならない、と報道する。ついには近隣の大学まで
    騒ぎを知って、あなたを落とせ、とあからさまに要求してくる。
    小論文の採点委員は、このような状況で公正な採点などできる
    だろうか?
    
     これと同様の無法な外部介入が中学用歴史教科書の検定過程
    で実際に起こっている。一部の思想勢力が検定ルールを公然と
    踏みにじり、自分達の気に入らない教科書を不合格にさせよう
    としているのである。
    
■2.「新しい教科書」■

     不法な集中攻撃を受けている教科書は、「新しい歴史教科書
    をつくる会」が主導して、同会会長西尾幹二氏が執筆し、扶桑
    社から申請されたもの。同会の公式ホームページ[1]に掲載さ
    れている『「つくる会」の主張』では、次のような指摘がなさ
    れている。
    
         ところが戦後の歴史教育は、日本人が受け継ぐべき文化
        と伝統を忘れ、日本人の誇りを失わせるものでした。特に
        近現代史において、 日本は子々孫々まで謝罪し続けるこ
        とを運命づけられた罪人の如くにあつかわれています。
        (中略)
         
         私たちのつくる教科書は、世界史的視野の中で、日本国
        と日本人の自画像を、品格とバランスをもって活写します。
        私たちの先祖の活躍に心踊らせ、失敗の歴史にも目を向け、
        その苦楽を追体験できる、日本人の物語です。 

     このように歴史教育の改革を目指して、「新しい歴史教科
    書」が作られ、扶桑社から検定申請が出された。以下、「新し
    い教科書」と呼ぶ。
    
     複数の教科書出版会社から提出された申請本は、学習指導要
    領と検定基準に従って、内容のバランス、および、歴史事実の
    誤記などが教科書審査官によってチェックされ、教科用図書検
    定調査審議会で審査される。その際、検定の公正を確保するた
    めに、申請本は社名も編著者名も入らない白い表紙で統一され
    るために「白表紙本」と呼ばれる。
    
     審査の結果、訂正を要する点については検定意見が出され、
    各社の記述修正後、審議会での再度の審議を経て合否が決定さ
    れる。検定過程は外部の干渉を防ぐために公開されないが、検
    定後は教科書研究センターなどで白表紙本と検定後の見本本が
    公開され、検定でどこがどう変わったかを調べることができる。
    
■3.外務省元高官の不合格工作■

    「新しい教科書」を不合格にさせようとする最初の不法介入は、
    平成12年10月上旬、教科用図書検定調査審議会委員の野田
    英二郎・元駐インド大使が、「日本の戦争犯罪の記述が足りな
    い」「ドイツのネオナチと同一視される」などと批判した資料
    を審議に先立ち、第二部会(社会科)の委員計9人に送ったこ
    とだ。
    
     外務省アジア局の佐藤重和参事官は中国首脳が日本政府に南
    京事件など「旧日本軍の残虐行為」の記述を削減しないよう再
    三要求したことについて、「教科書問題に触れた発言はあった。
    対外秘の発言だった」と述べ、中国からの内密の圧力があった
    ことを事実上認めている[2]。

     野田元大使は、雑誌「世界」の平成9年1月号に発表した
    「自立平和外交への道」という論文で、台湾問題について「伝
    統と歴史をもつ中国人のナショナリズムは、台湾問題を国際化
    しようとするいかなる動きも許さないであろう」と書き、尖閣
    問題については「これ以上、『尖閣』が両国間の感情の問題と
    なることなく、『棚上げ』の原点に戻るよう切望したい」と述
    べ、北京政府の主張を忠実に代弁している人物である。[3]
    
     このような人物が検定調査審議会に入り込んでおり、中国の
    意向を受けて「新しい教科書」を不合格にすべく工作を行って
    いたのである。この工作が発覚すると、衆院文教委員会でも問
    題とされ、文部科学省は野田元大使を「価格分科会」へと配置
    換えする形で事実上、更迭した。

■4.流出した白表紙本■

     さらに非公開での検定中にも関わらず、「新しい教科書」の
    白表紙本のコピーと称されるものが大量に出回り、反対集会な
    どで展示されたり、配布されたりする、という事件が起きた。
    
     11月18日、東京都内で開かれた「社会科教科書シンポジ
    ウム」では、配られたチラシには「あぶない教科書がつくられ
    ている!」として、「日本国憲法を否定する教科書をあなたは
    許せますか」「二十一世紀の世界に通用しない主張で日本をア
    ジアから孤立させる教科書です」などとの言葉が並び、教科書
    申請本のコピーが配られた。[4]
    
     さらに教員志望者向け雑誌に「申請本を読む」と題し、特定
    の出版社の名称を実名であげたうえで、批判を加える記事も掲
    載された。この記事には、申請本の写真が掲載された。
    
     本年2月15日には、歴史学者ら889人が、「神話を歴史
    的事実のように記述するなど、事実をゆがめ、非科学的なもの
    だ」と批判するアピールを発表した。 [5]

    「(コピーは)いくらでも出回っており、簡単に手に入れられ
    る」との声もあり、非公開の検定プロセスで白表紙本が盗み出
    された可能性が高いが、文部科学省は守秘義務を理由に「流出
    した本が白表紙本なのかどうかも話せない」という。
    
    「なぜ表紙を白紙にしているかという理由を考えてほしい。
    外に出ることは好ましくない」と文部科学省は困惑しているが、
    白表紙本の管理に関する法令などの規定がないため、今後の対
    応については「現時点では考えていない」との姿勢だ。[4]

■5.朝日新聞の介入■

     2月21日には朝日新聞が、朝刊一面トップで「中韓懸念の
    『つくる会』教科書」「政府『政治介入せず』」「中韓など反
    発必至」などと報じた。「新しい教科書」を中国や韓国が批判
    しているにもかかわらず、日本政府が政治介入しない方針を固
    めたため、検定に合格する可能性が高まり、中韓両国からの反
    発は避けられない−という内容で、政府が政治介入しないこと
    が問題であるかのような書きぶりである。
    
     翌22日には、「検定の行方を注視する 歴史教科書」と題
    した社説で、次のように述べた。
    
        (「新しい歴史教科書をつくる会」の中心メンバーは)
        「自虐史観」などと攻撃し、過去の植民地支配や戦争を肯
        定的にとらえようとする。それは、当時の日本の国民の苦
        しみや、侵略を受けた人たちを無視した一方的な解釈であ
        る。こういう歴史観を教室で教えることが、次代を担う子
        どもたちのために本当によいことなのだろうか。疑問を禁
        じえない。[6]
    
     これに対して、産経新聞は石川水穂氏の署名入りで朝日の報
    道姿勢を厳しく批判した。
    
         検定意見に沿った記述の書き換えなどが行われ、間もな
        く、教科書検定調査審議会で合否が決まる。それまでは、
        審議会委員に予断や先入観を与える報道は慎むのが暗黙の
        ルールである。

         朝日はすでに、このルールを破っている。(中略)
        
         朝日はなぜ、公正であるべき検定作業に影響を与えよう
        とするのか。中国や韓国からの批判を期待しているように
        も思える。扶桑社の教科書に問題があるとするのなら、検
        定が済むまで待つべきであろう。[7]

■6.中国政府の介入■

     21日の朝日報道と呼応するように、22日には中国外務省
    の朱邦造報道局長が定例会見で、以下のような発言を行った。
    
         中国政府と人民は、日本国内で最近教科書にからみ現れ
        ている動向を極めて注視しているものである。指摘すべき
        は、日本の右翼団体が周到な用意のもとに、皇国史観を高
        く宣伝し、侵略の歴史を否定、美化する目的で歴史教科書
        を作り上げていることである。仮に修正を経たとしても、
        反動的でデタラメな本質は変えることができない。

         中国はすでに、あらゆるルートを通じ、日本側に厳正な
        立場を求め、懸念を伝えている。(中略)侵略の歴史を美
        化するいかなる教科書も登場することを阻止し、切に中日
        関係の大局を守るよう希望する。[8]

     わが国の特定の教科書について、他国が出版差し止めを要求
    するのは、あからさまな内政干渉であり、わが国主権の侵害で
    ある。この点、読売新聞社説は論旨明快である。
    
         中国では、共産党独裁の下、歴史認識といえば国家・党
        公認の歴史観一種類しか存在せず、その歴史観に対する批
        判、言論の自由も許されない。当然、教科書は「国定」し
        か存在しない。 

         そんな中国の国定歴史認識に合わないからといって、日
        本の特定教科書を不合格にせよと求めるというのは、日本
        国憲法の基本的価値観である思想・信条・言論・出版の自
        由への干渉に等しい。 [9]

■7.3度目のお先棒担ぎ■

     朝日新聞が教科書問題で大々的な非難キャンペーンを行い、
    北京政府がそれに乗って、わが国に圧力をかける、というのは、
    これですでに3度目である。
    
     1度目は、昭和57年の教科書検定で「『侵略』を『進出』
    に改めさせた」というニュースを朝日新聞が一面トップで流し、
    それに基づいて中国政府が抗議してきた事件である。これは完
    全な誤報であることが、産経新聞などの報道で明らかにされた
    が、朝日はごく目立たない形でしか訂正を行わなかった。
    
     時の宮澤官房長官は、誤報であることが明らかになったにも
    かかわらず、「近隣諸国との友好・親善に配慮する」という談
    話を発表し、これをもとに教科書検定基準の一つに「近隣諸国
    条項」が加えられた。[a]
    
     2度目は昭和61年、朝日新聞が検定中の高校歴史教科書
    「新編日本史」の白表紙本について、「“復古調”の日本史教
    科書」「原稿本で教育勅語礼賛」などと批判的に報じたケース
    である。その後、審議会で新編日本史は検定に合格したが、中
    韓両国からの批判を受けて、官邸と外務省が介入し、異例の合
    格後4回の書き直しをさせられた。これを機会に、審議会に外
    務省枠が設けられ、今回、野田元インド大使の工作を許した。

     1度目は近隣諸国条項、2度目は審議会での外務省枠と、騒
    ぎのたびに、北京政府が教科書問題について口を出すルートが
    確立されてきているのである。
    
■8.「中国の友人」たち■

    「中国の友人」という言葉を本講座42号で紹介した。文化大革
    命の頃、日本のマスコミの中でただ一人中国に残ることを許さ
    れて、北京政府の意向に沿った記事を流し続けた朝日新聞の秋
    岡家栄記者は、その典型である。[b]
    
     今回の野田元インド大使、白表紙本を盗み出して攻撃を加え
    る活動家たち、そして検定中の教科書を批判するというルール
    破りをした朝日新聞、皆、まさしく「中国の友人」である。
    
     しかし、これら「中国の友人」たちを使って、歴史認識で日
    本国民に罪悪感を持たせ、それを圧力に援助を引き出すという
    詐欺的外交を北京政府が続ける限り、対中感情は悪くなる一方
    だ。平成11年の読売新聞社・ギャラップ世論調査では、中国
    に対して「悪い印象」を持っている日本国民の比率は実に46
    %、4年前の35%に比べても、大幅に増加している。政府開
    発援助で貰うものだけ貰って、感謝どころか謝罪要求では、い
    くら人の良い日本人でもうんざりするのは当然だ。[9]
    
     北京政府にいつまでもこんな外交詐術が続けられるという錯
    覚を与えている一因は、朝日新聞の「中国の友人」としてのお
    先棒担ぎにある。朝日新聞が真の日中友好を願うなら、このよ
    うな事はもうやめるべきである。
                                          (文責:伊勢雅臣)
                                          
■リンク■
a. JOG(044) 虚に吠えたマスコミ
   朝日は、中国抗議のガセネタを提供し、それが誤報と判明して
  からも、明確に否定することなく、問題を煽り続けた。
b. JOG(042) 中国の友人
   中国代表部の意向が直接秋岡氏に伝わり、朝日新聞社がそれに
  従うという風潮が生まれていた。

■参考■(お勧め度、★★★★:必読〜★:専門家向け)
1.  新しい歴史教科書をつくる会公式ホームページ
    http://www.tsukurukai.com/
2. 「教科書検定 “中国圧力”認める 外務省『対外秘の発言だ
   った』」、産経新聞、H12.12.08、東京朝刊、1頁
3. 「教科書検定審議会 野田元大使外れる 他の1人も 
   外務OB姿消す」、産経新聞、H13.01.13、東京朝刊、1頁
4. 「検定中の歴史教科書 コピー大量流出 本来非公開、集会で配
   布 図書名挙げ非難」、産経新聞、H12.12.04、東京朝刊、1頁
5. 「『非科学的』と学者ら批判 『新しい歴史教科書をつくる会』
   教科書」、H13.02.16、産経新聞、東京朝刊、37頁
6.「検定の行方を注視する 歴史教科書(社説)」、朝日新聞、H
   13.02.22、東京朝刊、2頁
7. 「『朝日新聞』の教科書報道 何を意図するのか 外圧誘導と
   政府の政治介入?」、産経新聞、H13.02.22、東京朝刊、1頁
8. 「検定中の特定歴史教科書 中国、不合格を要求 『日中関係に
   影響』言及」、産経新聞、H13.02.23、東京朝刊、1頁
9. 「日中、互いの好感度ダウン/読売新聞社・ギャラップ世論調査」
   読売新聞、H11.09.30、東京朝刊、1頁

_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/ おたより _/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/
                                    松本さん(台湾在住)より

     私は半導体・液晶製造装置のエンジニアとして1年半近く前
    から台湾に滞在しております。台湾での「日本ブーム」は、既
    にブームと呼ぶよりも文化の一部として定着しているように感
    じます。
 
     翻って、日本での台湾に対する認識の弱さ、歴史的背景、現
    在の関係、これからの関係について本気で考えている人はどれ
    だけいるのでしょうか。特に政治家にこの認識がないように思
    います。中国(大陸)一辺倒ですね。
 
     台湾集集大地震から数日経って電気の送電が回復し、テレビ
    のニュースを見て、映っていたのは復旧作業に汗を流す日本の
    隊員でした。後にこの姿は郵便切手の絵柄に採用されました。
    それほど日本人は活躍したのです。そして先日の中米エルサル
    バドルでの地震を知った台湾の人達は、集集大地震の恩返しに
    とこぞって現地入りしたそうです。これが和の精神と思います。
    台湾には伝わっていました。
 
     ですから、日本に住んでいる日本人は、もっと自信を持って
    欲しいと思います。言うだけでなく、行動も伴って欲しいと思
    います。それが海外にいる一日本人としての小さな希望でもあ
    ります。

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