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【主張】北京聖火リレー 名ばかり同然「調和の旅」

2008.4.11 03:13
このニュースのトピックス主張

 これほど歓迎されないオリンピック行事は前例がない。中国によるチベット抑圧への抗議行動の標的となっている北京五輪の国際聖火リレーが、各地で次々と巻き起こされる混乱から、リレー継続の意義を問われかねない事態に陥っている。

 ロンドン、パリから海を渡った米サンフランシスコでは、混乱を恐れた市当局が秘密裏にルートを変更し、ほとんど一般市民の目にふれることがない異常な展開となった。今後に予定されるジャカルタや香港でも、ルートの変更・短縮や一般見物者の排除などが検討されている。何のための聖火リレーか、といわれよう。

 聖火リレーの最大の目的は「五輪ムード」の盛り上げにある。中高年の世代なら、昭和39(1964)年東京五輪の聖火リレーの感動を記憶しているはずだ。

 北京五輪組織委員会は今回の聖火リレーを「調和の旅」と銘打ち、めざましい経済発展をとげた中国の力を全世界に誇示しようとした。だが、チベット騒乱への強権的な対応が非難を浴び、加えて各国の聖火リレーでの厳重な警備ぶりが北京五輪のイメージを悪化させている。

 とくに、ロンドンやパリでは、そろいの青いスポーツウエアに身をかためた若い中国人が警官以上に目立った。北京五輪組織委が派遣した警備隊員だが、リレー走者が胸につけた人権擁護バッジを「はずせ」と命じたり、「もっと聖火を高く掲げろ」と怒鳴ったりしたという。こうした言動は、「人権」「友情」「相互理解」といった文言がちりばめられたオリンピック憲章とは相いれない。

 次の五輪開催国のブラウン英首相の北京五輪開会式欠席が明らかになった。「調和の旅」が期待された成果をあげるのは非常に難しい状況になっている。

 聖火リレーはこの後、南米、アフリカ両大陸から中東などを経て26日には日本の長野に至る。聖火が次のソウルに引き継がれるまで暴力は否定すべきだが、チベットの自由を訴える平和的な行動もまた保障されなければならない。

 チベット亡命政府の長であるダライ・ラマ14世は10日、米国への途中で成田空港に立ち寄った際、改めて「五輪の中国開催支持」を表明した。寛容の姿勢をみせる、この仏教指導者との対話に踏み切るしか、色あせた「調和の旅」を救済する方法はない。

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