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【主張】対北制裁延長 官民で日韓連携強めよう
政府は、北朝鮮船舶の入港禁止や全品目の輸入禁止など日本独自の対北経済制裁をさらに半年間、延長することを閣議決定した。
拉致問題は、昨年9月に行われた6カ国協議の日朝作業部会を最後に、日朝間協議が途絶えたままだ。核問題でも、北は6カ国協議の合意に基づく「完全かつ正確な核計画申告」を履行していない。北に前向きな対応や誠意らしきものは、全く見られない。制裁延長は当然の決定である。
北朝鮮問題が膠着(こうちゃく)状態に陥る中で、注目すべき変化もある。今年2月に就任した韓国の李明博大統領が、10年間続いてきた対北融和政策を転換する方針を打ち出したことだ。李大統領は先月、「これまでの対話方式は変えるべきだ」と述べ、見返りのない一方的支援を見直す考えを明らかにした。
拉致問題についても、李政権は「国家の基本責務との観点から最優先課題として推進する」と政策計画書に明記し、「生死確認、面会、故郷訪問、送還の段階別で当局間対話を行う」と具体策を示した。先月の国連人権理事会では、北の人権状況を非難する決議に、初めて賛成票を投じた。
李大統領自身も、日本の政党幹部に「(拉致問題は)必ず解決しなければならない」と明言した。先の日韓外相会談でも、北の核、拉致問題で日韓が緊密に連携していくことが確認された。この関係をさらに強化してほしい。
また、日本の拉致被害者家族会は、韓国の家族会が6月末に予定している国際集会に参加する。日本と韓国は同じ拉致被害国で、多くの被害者が今も、北で救出を待っている。民間レベルでも、拉致問題の解決に向けて日韓の連携が強まることを期待する。
ねじれ国会とはいえ、拉致問題では、ほとんどの国会議員が足並みをそろえている。今回の閣議決定に先立ち、自民党の拉致問題対策特命委員会(委員長・中川昭一元政調会長)は、対北経済制裁の継続を求める決議を採択した。民主党の拉致問題対策本部(中井洽本部長)も、制裁継続に基本的に賛成する方針を決めている。
国会議員や有識者の一部に、日朝国交正常化の早期実現を目指す動きもあるが、国交正常化は拉致問題が解決してからの話である。今は、拉致問題などの解決のために、できるだけ多くの国民が力を合わせたい。