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【主張】北京五輪開会式 皇族の欠席を支持したい
チベット騒乱への中国政府の強権的対応が、8月の北京五輪に暗い影を投げかけている。ドイツなど欧州の5カ国首脳やチャールズ英皇太子も不参加を表明する中、日本政府は中国側からの皇族方の出席要請を受諾しない方針を固めた。
隣国・中国で開催される「平和の祭典」である。皇族方の出席が実現しないことは中国にとっては残念だろうが、現時点では適切な判断といわざるをえまい。それは、政治的に利用されることがあってはならないからだ。
東京、ソウルに次いで3度目のアジアでの五輪開催となる北京大会は、改革・開放によってめざましい発展をとげた中国の国威を内外に向けて誇示する大舞台だ。とくに全世界がテレビにくぎ付けになる開会式には、六十数人の各国指導者、元首が出席した前回のアテネ大会を上回る顔ぶれをそろえたいとしている。
それだけに開会式への皇族の出席は慎重を期す必要がある。自由を求める抗議行動を国内法違反との理由で一律に武力鎮圧し、チベット仏教の最高指導者ダライ・ラマ14世の対話の呼びかけにも応じない中国政府の強硬姿勢を日本政府が容認したとのメッセージになりかねないからだ。
中国製ギョーザ中毒事件や東シナ海のガス田共同開発問題も未解決のままである。
皇族が政治利用されたあしき例は平成4年の天皇、皇后両陛下の訪中だ。中国の銭其●元外相は回顧録で、民主化運動を武力鎮圧した1989年の天安門事件で国際社会から孤立していた中国が「西側の制裁を打ち破る突破口になった」と認めている。
五輪はその理念とは裏腹に、しばしば政治の影に揺れた。最近では旧ソ連のアフガニスタン侵攻を理由に米国など西側諸国が集団ボイコットしたモスクワ大会(1980年)と、その報復に東側諸国のボイコットがあったロサンゼルス大会(1984年)が、有力選手の不在で物足りない内容の大会となった。
聖火の国際リレーはすでに始まった。北京大会の開会式ボイコットの拡大を抑えるには、チベット問題の平和的解決しかない。
関係者は、オリンピック憲章の次の一節を読み返してほしい。
「スポーツを行うことは人権の一つである」(オリンピズムの根本原則)
●=王へんに探のつくり