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【主張】G7 危機克服に緊密な連携を
白川方明日銀総裁が初めて出席した先進7カ国財務相・中央銀行総裁会議(G7)は、米国発の金融危機に対処するため、世界の主要な金融機関を共同で監視するなどの金融市場安定化策で合意した。
米連邦準備制度理事会(FRB)のバーナンキ議長が「戦後最も深刻な危機」と語る金融不安の増幅に各国が危機感を共有したからだ。G7は危機克服に向け緊密な連携を怠ってはなるまい。
今回のG7の特徴は、金融危機の病根である米国の低所得者向け高金利型住宅ローン(サブプライムローン)問題に具体的な処方箋(せん)を提示したことだ。急激なドル安にも異例の牽制(けんせい)を行った。
背景にはサブプライムローンの焦げ付きが一段と拡大し、そのローンが組み入れられている証券化商品を保有する欧米の金融機関が相次いで資本増強を迫られていることがある。FRBが特別融資で米大手証券を救済したことも各国の危機意識を高めた。
この危機の根本原因は、世界中の金融機関や投資家が抱える損失額の全体像がつかめず、銀行や証券会社の経営不安が払拭(ふっしょく)されないことだ。金融機関同士の疑心暗鬼は貸し渋りを招き、実体経済にも悪影響が広がっている。
G7は今回初めて実行期限を定めた具体的な処方箋を打ち出した。各国の危機感が頂点に達していることの表れである。その対策は世界的な大手金融機関ごとに監視グループを設置するほか、金融機関の証券化商品の時価情報の開示強化などである。さっそく処方箋を実行に移し、市場の動揺の収束につなげてほしい。
G7は急激なドル安に対して強い懸念も示した。為替変動への懸念表明は2000年9月以来である。とはいえ、為替介入を示唆したものではない。むしろ、世界経済減速の震源地である米国への注文と読み解くべきだろう。
米国は、FRBが大幅な利下げと大量の資金供給、ブッシュ政権が減税や住宅ローンの借り換え策を打ち出している。しかし、金融市場はその効果に懐疑的である。FRBの救済融資が焦げ付く懸念さえ抱き始めている。そうした懸念が米国債やドルの信認低下を招き、ドル安を一段と進める。
ブッシュ政権は大統領選を控え、慎重な姿勢を崩さないが、市場を安心させるためにも公的資金を投入すべきだ。