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【主張】調書引用出版 取材源の秘匿は大原則だ

2008.4.13 02:45
このニュースのトピックスメディア倫理

 報道や出版などメディアに携わる者は、取材源を秘匿し、厳格に守ることが大鉄則である。この基本が貫けないようでは、ジャーナリストやメディアとしては失格といわざるを得ない。

 奈良県田原本町の医師宅での放火殺人で、講談社が17歳の長男の供述調書を大量に引用した単行本を出版、少年を鑑定した精神科医が秘密漏示罪で奈良地検に逮捕・起訴された事件で、同社が設置した第三者調査委員会の詳細な報告書が公表された。

 この中で、著者の女性フリーライターや講談社編集者の一連の取材について、調査委が取材源の秘匿や取材方法に重大な瑕疵(かし)があったと指摘し、厳しく批判したのは当然のことである。

 取材を受けた医師が逮捕されるという最悪の結果を招いた著者や講談社の責任は重大で、メディアの社会的信頼、信用も大きく失墜させる結果となった。

 著者は元少年鑑別所の法務教官で精神科医から少年の供述調書を自宅で見せてもらった。医師が勤めに出た後、講談社の編集者らとデジタルカメラで調書を撮影した。この調書をもとに、「週刊現代」と月刊「現代」に事件に関する記事を掲載したが、調書を直接引用することはなかった。

 事件になったのは、「僕はパパを殺すことに決めた」というタイトルの単行本が出版されてからで、その内容の大半は調書から直接引用したものでこれでは、調書の漏洩(ろうえい)者が一目瞭然(りょうぜん)である。結局、検察当局が捜査に乗り出し、医師を逮捕するという異例の事態にまで発展した。

 講談社は学者、弁護士、ノンフィクション作家らで調査委をつくり、その調査結果から著者や講談社側の問題点やずさんな対応が浮き彫りになった。

 調査委は著者らは医師との取材上の約束を破り、取材源の秘匿についても「絶対に守り抜くという強い意志に欠け、公権力の介入を招く脇の甘さがあった」と厳しく指弾した。

 調書の大量引用で関係者のプライバシーが侵害されたとも言及している。講談社では、原稿の段階で幹部が目を通していながら、問題にならなかったのもメディアとしては考えられない。

 今回の事件は取材源の秘匿に対する筆者、講談社の認識の甘さから生じた。言論・報道につく者として肝に銘じたい。

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