「大恐慌以来の混乱」「戦後最大の金融危機」。そんな厳しい認識が当局者から相次いで示される中で開いた7カ国(G7)財務相・中央銀行総裁会議は、金融市場の安定化へ向けて協調行動を取ることを再確認するとともに、危機の再来防止のための措置の早期実施を促した。
会議は、日米欧当局がより強い危機意識を持って問題に臨む決意がうかがわれるものにはなった。だが、市場を覆う不安をぬぐうような答えが示されたとは言いにくい。
G7の共同声明は、世界経済が困難な状況に直面しているとし、金融市場の機能回復には様々な課題の解決が不可欠との厳しい認識を示した。リスクの徹底的な開示や金融機関の資本増強を促した「金融安定化フォーラム」の提言を期限つきで実施するよう求めているのも特徴だ。
目新しいのは国際金融システムの安定性と絡めて「主要通貨の急激な変動」による悪影響に懸念を示した点だ。声明が主要通貨の動向に懸念を明記したのは7年半ぶり。背景には金融危機の深刻化に伴い、ドルへの信認が揺らぎ始めたことがある。
会議が世界経済の最大のリスク要因である金融市場の混乱にほぼ焦点を絞ったことや、危機再来を防ぐための総合的な対応策を示した「金融安定化フォーラム」の提言の早期実施を促したことは歓迎したい。
ただ、目前の脆弱(ぜいじゃく)な金融システムをどう立て直すか、なおくすぶる金融機関の破綻懸念にどう対応するのか、については明確な処方せんは示されなかった。各国の状況に合わせて適切な行動を取るとするにとどめている。危機回避の目玉として注目される世界の主要金融機関の国際的な監視体制の構築も、今年末までの課題となっている。
信頼回復に向けた金融機関の自主的な取り組みや、不十分だった情報開示基準の見直しなどは重要だが、それだけでなお大きな地鳴りが聞こえる当面の危機を乗り越えられるかは不透明だ。政府がより表に出た対応が求められる局面もあるだろう。
米国については、米連邦準備理事会(FRB)頼みの危機対応でよいのかと問う声もある。G7が示したドル懸念の裏には、ドル信認の要となるFRBのバランスシートの健全性に懸念が持たれ始めたことがある。健全とはいえない資産を担保に資金を供給したり、米証券ベアー・スターンズ救済策のように不良債権のリスクを保証したりしたためだ。
結束や協調という言葉を超えて、どんな行動を取るのか。不安に揺れる市場はそこを注視している。