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社説:G7と金融危機 震源地・米の覚悟が問われる

 世界的な金融不安は収まるのか。米国のサブプライムローン(低所得者向け高金利住宅ローン)焦げ付きに始まった市場の動揺が、世界不況に発展することはないか。先進7カ国財務相・中央銀行総裁会議(G7)が出す答えに、世界が注目した。

 G7が用意したハイライトは「金融安定化フォーラム」による報告書だ。フォーラムはG7など主要国の金融監督当局や国際機関で構成するもので、昨年秋に金融危機の底流にある問題を洗い出すようG7から要請され、作業を進めてきた。今回、70ページに及ぶ報告書をまとめ、G7はその意義を強調すると同時に、盛り込まれた提言の早期実施を表明した。

 提言には、金融機関による情報開示の改善や、資金繰り難への備え、国際的に活動する金融機関の監視で各国の当局が連携することなどが盛り込まれた。リスクの所在と大きさを見えやすくして不安の無用な拡大を防いだり、資金繰り難に当局と金融機関がそろって備えることなどにより、個別の問題が市場全体の機能不全に発展するのを回避する狙いがある。

 問題の深さが見えない点に不安のもとがあることを考えると、情報開示やリスク評価の強化を促した報告書の処方せんは、正しい方向への第一歩といえそうだ。しかしながら、報告書はあくまで将来の再発防止を主眼としており、目の前を覆っている不安をすぐに取り払ってはくれない。

 結局のところ、今ある危機を封じ込められるかどうかは、震源の米国で政府と中央銀行(連邦準備制度理事会=FRB)がどこまで踏み込んだ行動をとるかにかかっている。

 全米5位の証券会社、ベア・スターンズの救済劇で異例の特別融資を断行したFRBは、その後も緊急時の資金供給に備えた対応策を検討している模様で、強い危機感が伝わってくる。しかし、中銀の支援だけでは限界が来るかもしれない。公的資金の投入なしに早期解決は困難と見られるが、米政府は、否定的だ。バブルに踊り、何十億円もの報酬を受け取ってきた金融機関経営者の失敗を血税で補うとなれば、猛批判を浴びかねないためである。特にガソリンや食料品の値上がりで庶民の不満が高まっている今、一部への公的支援は理解を得にくい。

 しかし、いったん危機の連鎖が始まれば、ドルの暴落や世界経済の大混乱を招く恐れがあり、収拾のための費用は想像を超えた額となろう。G7の共同声明はドル安への警戒感を強くにじませた異例の文言を盛り込んだが、危機意識だけで、当局が不安の病巣を取り除く行動に出なければ、かえって市場からドル売りの攻撃を受ける危険が潜む。

 ショーの幕が下りてからが試練だ。米政府の断固たる行動に期待する。

毎日新聞 2008年4月13日 東京朝刊

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