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矛盾を抱えた日本の植民地支配(上)

駒込武著/オ・ソンチョル、イ・ミョンシル、クォン・ギョンヒ訳『植民地帝国日本の文化統合』(歴史批評社) 

 「昔、台湾の阿里山には、人を殺し首を供えて祭祀を執り行う悪習があった。呉鳳という人物がこの悪習をなくすために、『どうしてもやりたいのなら明日の昼、赤い服を着た人が通り過ぎるからその人の首を取れ』と言った。翌日、まさにその人が通りかかったため殺したところ、呉鳳本人だった。人々はようやく悔い改め、二度と殺人を犯すことはなかった」

 これは、1914年に日本の台湾総督府が発行した修身の教科書『公学校用国民読本』に登場する話だ。漢族が台湾を征服する過程で作られたこの伝説が、なぜ日本統治下の教科書に登場するのだろうか。原住民の「野蛮性」と「文明開化の重要性」を強調することで「天皇制」の権威を受容し易くすると同時に、「自己犠牲」の理念を注入した、というのが著者の解釈だ。韓国の高校の国語教科書にまでこの話が登場したことを考えれば、その政策の生命力が決して弱いものでないことが分かる。

 本書は19世紀末から1945年まで、周辺のアジア諸国を武力で侵略し植民地支配を行った日本が、その植民地をどのように統治したかに焦点を当てた。京都大学大学院教育学科準教授の著者・駒込武は、1996年に日本で初めて刊行したこの本で「朝鮮・台湾・満州と中国占領地での植民地教育」を素材として、日本帝国主義が目指した「国民国家的統合」の作動原理を詳しく分析した。

 日本の植民地統治の方針とは、よく言われる「同化政策」として説明するだけで済むものなのだろうか。著者はここに根本的な疑問を呈する。まず、「同化」や「皇民化政策」というものは、1930年代後半以降の台湾や朝鮮でのみ政策的に標榜されたものであるにも関らず、あらゆる時代・地域に適用される傾向があるというわけだ。彼は「“同化”という言葉を濫用することにより、植民地支配の理念も実態も見えにくくなっている」と強調する。

 研究者たちはこれまで、「皇民化政策の特徴は、その地域の歴史や文化を全く無視して“日本”を持ち込み、日本化を押し進めることだ。経済的収奪だけでなく、民族抹殺につながる皇民化政策を、“天皇”を戴いて実行したところに、日本の植民地支配の特徴がある」と主張していた。これは韓国でもおなじみの見方だ。だが、こうした命題をそのまま受け入れれば、「日本による支配はナショナリズムの発展であり、同心円的拡大だったということになる」と著者は指摘する。

兪碩在(ユ・ソクジェ)記者

朝鮮日報/朝鮮日報JNS
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