本紙一面に連載中の「ふるさとよ」に、「限界集落」の現状が取り上げられている。人が減り続け、寂しくなるばかりの土地で生きる住民の切なさが響いてくる。
限界集落とは六十五歳以上の高齢者が半数を超え、冠婚葬祭などの共同活動が困難になった地域のことを言う。名付けたのは長野大教授の大野晃さんである。
「ふるさと保全ネットワーク」が発行する情報誌「新・田舎人」の最新号に大野さんが登場し、限界集落にまつわる話を語っている。全国の林業労働者の実態を調査する中で、過疎が進む集落の人から「もう限界だ」という悲鳴を何度も聞き、二十年近く前に限界集落と呼ぶことにしたという。
過疎という言葉で地方の衰退を表現するだけでは、漠然としすぎて危機への認識は深まらない。対応策も現実的なものにならない。だからあえて限界集落というショッキングな名称を使い、問題提起したそうだ。
大野さんの定義では、限界集落の先は「消滅集落」である。そういうケースも増えている。自然を放置し国土が荒廃するに任せて、都市だけでやっていけるのか。限界集落をどうするかは、国民全体の問題だろう。
危機感を共有することが、再生につながる道と大野さんは説く。限界集落に生きる人たちの切ない声に耳を澄ませたい。