ホーム > きょうの社説


2008年4月13日

◎台湾トップセールス 共同戦線の可能性も探らねば

 石井隆一富山県知事が初めて台湾訪問したのに続き、今月下旬には谷本正憲石川県知事 も訪台する。台湾で北陸を波状的にPRするように見えても、知事が相次いでトップセールスに乗り出すことで、これまで指摘されてきた空港行政の対抗意識がかえって鮮明になることも予想される。実際、富山県は台湾で長野、岐阜県と商品提案会・商談会に臨み、「北陸」という枠組みは強く意識されていないのが現実である。

 全国を見渡せば、九州や東北では広域ブロックの観光推進機構が発足し、台湾をはじめ 東アジアからの誘客で官民一体の観光施策が打ち出されている。香川、岡山、鳥取の空港がチャーター便誘致で連携し、相互に到着と出発を受け持つ取り組みもある。

 台湾観光客が北陸でも順調に増えている今はよいとしても、各県がバラバラではそのう ち地域間競争で遅れを取りかねない。リピーター客を増やすには観光ルートが固定化しては不利である。そう遠くない距離に三つの「空の玄関口」を持つ強みを生かし、北陸として共同戦線の可能性を真剣に探るときである。

 富山県では石井知事を団長とする訪問団派遣に合わせ、今月上旬、台北の百貨店で物産 展「とやまフェスタ」を開催し、伝統芸能公演も行った。航空各社でチャーター便の増便を要請し、今年度は昨年度実績を大幅に超え、百六十便以上となる見通しである。富山県では富山空港のチャーター便の通年化を目指しており、小松―台湾定期便の六月就航で双方向の乗客確保に力を入れる石川県とは戦略の違いも明確になってきた。

 だが、石井知事が小松定期便を就航させるエバー航空に小松経由の富山県への誘客を要 請した際、同航空側が富山県からの送り込みを求めたように、両県が協力する余地は大いにある。旅行会社が団体客を募るチャーター便と違い、定期便では個人客の増加も見込まれ、余裕を持った地方滞在プランも必要になってくるだろう。北陸の歴史やストーリー性を生かした多様な周遊プログラムを台湾の人たちに訴えかけていきたい。

◎李政権が安定へ 経済で日韓関係強める時

 大統領の任期は五年で、再選なし。国会は一院制、議員の任期は四年、日本と違い解散 がないのが韓国だ。その韓国で保守の与党ハンナラ党が先の総選挙で過半数を確保し、李明博大統領の政権基盤が強化された。安定へ向かうだろう。

 経済人出身の李大統領は、安定を後ろ盾に「日韓シャトル外交」を通して、盧武鉉前大 統領の下で長らくぎくしゃくが続いた対日関係を経済を軸に深め、発展させていくシナリオを描いている。日本も経済で関係を修復し、強化する時だと受け止めたい。

 ただ、経済を軸に―といっても、解決を要する課題が少なくない。取っ掛かりとしてグ ローバルな立場から懸案の日韓経済連携協定(EPA)交渉を再開させ、これを足場に両国にとって望ましい関係を粘り強く探りたい。

 日本と韓国には共通点が多い。互いに資源小国、加工貿易国であり、人的資本や、これ と不可分の技術立国、少子化の国でもある。両国の貿易総額は七百億ドルを超える。日本にとって韓国は中国、米国に続く第三位の貿易国である。韓国にとって日本は中国に次ぐ第二位の貿易国である。

 人の往来をとってみても今では一日当たり一万人をゆうに超えるようになった。

 が、韓国は日本から中間財(素材・部品)を輸入して欧米やアジアに製品を輸出すると いう構造的な問題を抱え、対日貿易は大幅な輸入超過となっている。戦後ずっと「水平分業」の実現を求めてきた韓国にしてみれば、解決したくてたまらない大きな問題なのだ。

 そうしたことを受けて対日赤字の解消を目指し、両国間の投資・技術協力の拡大、中間 財生産のための日本企業の韓国への単独進出、日韓合同の投資などを促進するため、〇四年から開始し、中断しているのがEPA交渉である。

 よりよい関係を築こうと言いながら、それをほごにして竹島問題、靖国問題、歴史問題 等で堂々めぐりを繰り返してきた政治の季節に終止符を打つことができる、願ってもないチャンスがめぐってきたのである。


ホームへ