「THE END OF EVANGELION」直前の声優たちへのインタビュー。それぞれのキャラのシーンを思い浮かべながら読むとより一層楽しめる内容になっている。
数日間に分けて行なわれた劇場版のアフレコ初日、6月8日。
作品最後とあって、声優たちは緊張した面持ちでスタジオに集まってきた。
「エヴァ」という作品とその物語の結末について、彼女たちは何を思い、
マイクの前に臨んだのだろう。本番直前の生の声を聞いてみた。
三石琴乃◆葛城ミサト
今回のアフレコでは、「REBIRTH編」の部分もすべて録り直してるんですが、同じ場面でも、「REBIRTH編」と今回の「Air」では、セリフの捉え方がずいぶん変わったと思います。だからきょうのアフレコも、どう転ぶかはまったくわからないんですが……。そういうわけで、きょうはもう一度トライするぞという気持ちと、そしてもちろん最後だということで、エリを正してまいりました(笑)。
ミサトが「REBIRTH編」や今回の「Air」でする行動は、彼女らしいと言えば彼女らしいなと思ってます。加持君との別れから「女のあいまいさ」「女のだらしなさ」がなくなり、たくましくなったなぁと感じてますね。……ちょっち、悲しいことだと思ったりして。セカンドインパクトの調査隊ただひとりの生き残り。父から受け継いだクロスのペンダント。彼女の行動。シンジくんへのことば……。もしかしたら「そのため」に、彼女はあのとき生き残ったのかもしれないですね。
私にとっての「エヴァンゲリオン」とは……“生(ナマ)”かな。生きる、とか、生々しい、とか、その字から連想するものすべてなんですけど。
前回の劇場版がゴールだと思ってたら、まだ折り返し地点でした。ようやくホントのゴールが来たな、という感じです。苦しかったけど、みんなでちゃんとテープを切ってゴールインしようねって、いま、最後のアフレコを前に思っています。今回の映画はすごい内容で、口をあんぐりすることも多いんじゃないでしょうか。みなさんアゴを鍛えて(笑)、劇場にいらしてください。
緒方恵美◆碇シンジ
いまからアフレコに臨むわけですが、私としては特に緊張してるわけでもなく、気持ちとしては普段の通りです。脚本を読んだ感想はいま(始まる前)の段階では申し訳ないけど言えません。自分の中でためてる状態なので……。
今回の話では、いつにも増してシンジのアドリブがすごく重要なポイントになっているんですよ。実は…本当に今回は、正直言ってラストシーンが演れるか、ちょっと怖いんです。どういう感じのアドリブになるのか、私の頭の中でまだ明確なプランがないんです。そのくらい難しい。
昨日、監督といろいろお話をしていたんですけど、とりあえず実際に演じてみて、その過程で自分の気持ちがどう動くのか、その流れから生まれた気分で最後のシーンに取り組んでみようと。監督もそれでいいって言ってくださったんで、とりあえずそういう形で行きたいと思ってます。だから、終わるまではまだなんとも言えないんですよ。変な言い方なんですけど、今回はもしかしたら責任もてないかもしんないっす(笑)。
これで最後なんで、自分の中のシンジがどう動いて、どんなふうな答えを出していくのか、それをひとつひとつ丁寧に探っていきたいです。少年が育っていく過程の中でのあるひとつの答えが出せればいいなあと。とりあえず頑張ってみて……ま、たぶん最後には何とかなるはずだとは思います。スリル満点ですけど(笑)。みなさんも、どんな結果になったか見届けてやりに来てくれたらうれしいです。
まだ「エヴァ」が終わるという実感はないし、終わることについて、自分の中でことばが見つからないんですけど、私にとって「エヴァ」は、役者としてもモノを創る人としても、いままでにない体験をさせてくれた貴重な作品だったと思います。そういう意味で参加できて本当にうれしかったです。
山口由里子◆赤木リツコ
いま、ラッシュを見まして、ちょっと、泣きそうになっているんですけど……。昨日からもう夜中に何度も目が覚めて、ちょっと複雑な気持ちでいます。この2年半くらい、自分がずっとリツコとつきあってきて、今回のラストも予測はしてた結果なんですけれど、自分の中で納得できているのかいないのかわからないまま、きょうここに臨んでいます。台本の最後の最後にあるひと言のセリフが、絵を見てもいまだにどういうふうに出そうかと迷っている段階で。だから現場でやってみて、そこで出てくるものが正解なんだろうと、本当に生でぶつかろうと思ってます。
前回、映画を見た後に、みなさん複雑な思いで帰られたと思うんですけど、今回の映画もそれとは別の複雑さを感じるんじゃないでしょうか。でも、いいふうに残っていくラストなんじゃないかなと、少なくとも私はそう受け取りました。それがハッピーな終わり方とか、そういう意味の「いい」じゃなくて、心に残るものがそれぞれの人にある……。いやな感じや悪い感じは残らないんじゃないかと思いました。このラストを、色で言うなら、“無色”というのが近いかもしれません。色はあまりつけたくないけど、ちょっとイメージとしてついているとすれば、私にとっては“平和”ということばが浮かびますね。
ラストまで見て、「エヴァ」という作品の大きさを改めて実感しています。この作品にはいろんなことを気づかされたし、とにかくすごい作品だなというひと言で。私にとって「エヴァンゲリオン」とは、いままで挑戦してきた作品の中で、もっとも自分が成長できた作品だと思います。
長沢美樹◆伊吹マヤ
いよいよ最後かという感じですね。TVシリーズが始まってからもう2年半ぐらい経ちますけど、やっぱり長いおつきあいをさせていただいて、これだけ話題にもなった、私にとっていろんな意味で大きな作品だったので、とうとう終わってしまうのかという感慨がすごくあります。
私も個人的に「エヴァ」のファンなので、今回の最後の台本をいただいたときには、その衝撃的なラストに驚きました。誰が予想し得ただろう、このラストを。これは夢?って……呆然としちゃうというのがいちばん近いかな。今回もマヤちゃんは、「REBIRTH編」に近いことばを吐いたりしますし、そのほかとても平常心ではいられないような場所もあり、強烈な出来になっていると思うので、みなさん、ひとつ、心臓に毛を生やして(笑)、劇場にいらしていただければと思います。
この前の記者会見のときのことなんですが、私より先に台本を読んだ緒方恵美さんが、ひと言、「マヤちゃんってそういう人だったんだね」(笑)とおっしゃったのが、なんかすごく印象的でした。私も後で台本を読んで、なるほどと思ったんですけれども。
私もいままでは、伊吹マヤって人間は、わりと普通の女の子で、この世界の中で一生懸命生きてるんだよ、ということを言ってきたんですけど、彼女もやっぱり普通ではなかったということでしょうか。やはり“「エヴァ」に生きるもの”だなと思いました。
私が彼女に、何かひと言ことばをかけるとしたら「幸せだった?」って、あのラストで幸せだった?って聞いてみたいですね。
林原めぐみ◆綾波レイ
まずラッシュを見た感想は、ちょっとぐあいが悪くなるかな?って言うとこでしょうか(笑)。本生(ほんなま)という感じ、生々しいとか、痛い、とか、そういう感じで……。レイちゃんが、映画の26話にあたる部分から、大っ変化を起こすんですけど、脚本を読んで思わず「レイちゃぁ〜ん、だいじょうぶ〜〜?」って呼びかけたい気持ちになっちゃいました。私の場合、脚本を読むときはすごくロングな視点でいるから、自分が外側からレイちゃんを見て、大丈夫かなあと心配してしまう感じなんですけど。
今回、映画がどんな結末になるか、みなさんとても待ち遠しいところだと思うんですけど、私は個人的には、アニメーションというものは、どこか“娯楽”であったり“余暇”であると思っているんです。だからこういう形で注目されて世に出ていったりとか、何か自分の人生にかかわってくるというのは、結果論だと思うんですよ。アニメが人生そのものの道標になる場合も、あるにはあるんだけど、それがすべてではなくて、アニメを見てそこからどう考えるか、選択権は自分にあるんですよね。どういう気持ちで見るかは自由だし、そこから何を感じ取るかも自由。私はそんなふうに思っているので、たとえどんな作品でも、それが血みどろのシーンであれ殺戮であれ、アニメーションはどこか余暇であるという気持ちを、たとえ2mmでももってアフレコに臨みたいと思っています。
私にとってエヴァとは、「ホワイトホールだと思いたいブラックホール? それともブラックホールだと思いたいホワイトホール?」ってとこでしょうか。そこから生まれるの?そこで消滅するの? どっち?っていう…。今回で「エヴァ」は最後になるわけですが、私は「エヴァンゲリオン」というのは、完結することに意味があるとはあんまり思っていません。この完結から、さらにみなさんが、冷たく言えばかってに、温かく言えば愛情をもってその先を考えたり、想像することに意味があるように思っているので、あまり完結だから、という感慨深さはないですね。ここからみなさんが何かを探っていってください。
宮村優子◆惣流・アスカ・ラングレー
映画の脚本を読んだ時点で、いろいろわからないこととか想像を絶することがたくさん出てきました。だからアフレコも、舞台と同じようにそのときそのときの共演者の気持ちをニュートラルに受け入れられるように、「エヴァ」の話の流れより、アスカ自身の心の流れを自分の中でハッキリさせて、現場に臨もうと思ってます。
TVシリーズの25話、26話で結末を迎えたのではなくて、今回が本当のラストということで、ああ、「エヴァ」ってこういう終わり方なんだな……と、いま、めちゃめちゃ客観的な気持ちです。もちろん自分の役がまだこれからなので、そこは客観的ではいられないんですけど。まだ自分でも、すべてが終わるっていうのはどういうことなのか、あんまりよくわかんないですね。
私にとって「エヴァ」は、やっぱりいろいろと経験を積ませていただいた作品なので、参加できてすごくうれしかったんですけど、どっちかというと、なんだろ……美しい思い出と言うよりは、血で血を洗うバトルのような感じでした。
みなさんが待っていた「エヴァ」の最終回がこれでようやくできるわけですが、これがみなさんが望んでいたモノかどうかは、私にはわかりません。でも私もいまからアフレコを頑張りますので、とりあえず劇場に来てくださるとうれしいです。
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