「時事評論家」の増田俊男氏(69)がパラオ共和国の銀行への投資名目で集めた約16億円の大半が返済されなくなっている問題で、増田氏が8年前から「近く上場する」と宣伝していたカナダのIT企業が、約30億円もの出資を募りながら、いまだに上場していないことがわかった。
この企業の昨年3月期の売上高はわずか360万円で債務超過に陥っている。一部の投資家は先月末、こうした事実を説明しないまま宣伝していたとして、増田氏らに損害賠償を求める訴えを東京地裁に起こした。
問題の企業はカナダ・オンタリオ州に本社を置く「アリウス3D」。投資家の代理人などによると、増田氏は主宰する会員制投資クラブの会員らに、2000年から「アリウス3Dは第2のマイクロソフト(MS)になる。株価は40倍を見込める」などという宣伝を始め、約1000人がアリウス社の未公開株の購入名目で出資した。
ところが上場計画は何度も延期され、昨年になると、アリウス社がカナダのベンチャー市場に上場している別の投資会社と合併する内容に変更された。
今年3月には、合併先とされる投資会社が07年3月期のアリウス社の決算資料の一部を公開。アリウス社が「05年には200億円を超える」としていた売上高は約360万円しかないことが判明した。同社は約4億円の赤字も計上しており、監査法人が認めた同社の資産は1億円程度しかないこともわかった。
増田氏は、こうした経緯を投資家に説明していなかっただけでなく、昨年10月には「上場が決定した」として投資家を集めた“祝賀会”を東京や大阪のホテルで開催。「(株価は)10倍以上になる」と言って数億円の追加出資を募っていた。
投資家の代理人は「巨額の金がどこに消えたのか極めて不透明」としている。
増田氏は「アリウス社が回答する」とし、アリウス社の責任者名で「会社は良好な状態だが、財務内容の詳細は公開できない決まりになっている」などとするコメントを出した。
増田氏は10年前からパラオの銀行やハワイのコーヒー園など20件を超える海外投資案件で100億円以上を募集していたが、返金などを巡って相次いでトラブルになり、一部投資家が出資法違反容疑で警視庁に告訴状を提出している。
|