チャリティとフェアトレード
本日から、NNAという冊子と株式会社NNAのHP上(会員のみ閲覧可能)で、私をはじめ数々の専門家からなるチームによる「グローバル時代を生き抜くためのCSR -マーケットを味方につけるための戦略ツール-」の掲載が始まりました。今朝からの掲載なのですが、早速幾つかの読者から反応があったとのご連絡をNNA編集部から頂きました。
さて、それはとりあえずのご報告として、スリランカ事業の関連で幾つかの外食産業や食品業界と協議を重ねていることは、前回も書きましたが、本日はそれらの外食産業の事業に深く関わっている方で、数々のCSR事業を食品業界で手がけてきた方にお会いしてきました。Kさんと呼ぶことにします。フェアトレードについて、非常に有益なお話を聞くことが出来ましたので、もう一回それについて、書き足そうと思います。どうも、フェアトレードを誤解していた点もあるようですので。
フェアトレードというと、私が想像するのは、生産者支援の視点から、高額で生産物を買い入れるだけのものというイメージが強く、生産者の保護という視点ばかりが目立ち、「自立」や「継続性」といったこととは、程遠いものとして位置づけていました。
そこには、消費者の側からの視点が全く無く、「支援という正義」の視点から市場を見下ろす視点ばかりが目立ち、どうも心底から同意することが出来なかったのです。
しかし、今回そのKさんと意見を交わし、私のイメージするフェアトレードというものは、氷山の一角にすぎないことが理解できました。
どの業界もそうなのでしょうが、フェアトレード業界でも、「うちのフェアトレードの考え方が最も正しい」という内ゲバにも似た状態があるようです。正義の冠の奪い合いと言えばいいのか。「正義」とか「正しい」という言葉を使う立場にある人間ほど、柔軟性と慣用性を忘れてはいけないというのは、お題目になっているということでしょうか。
やはり最も目立つのが、あたかも上から見下ろすようにフェアトレードを語る方や団体。貧しいもの達を支援しようとする強い気持ちはわかるのですが、それがゆえに、生産者、そして消費者の双方を見下してしまっていることに気付いていない。生産者に対しては、「支援者」として、消費者に対して「啓蒙者」として振舞ってしまっているわけです。
で、消費者への「啓蒙」とは名ばかりのものに近く、実際は能動的な活動はあまり無い。消費者の側が変わることを座視していることを考えれば、かなりリアクティブな活動でもあるわけですね。
しかし、Kさんは、「本来フェアトレードというものは、消費者にとってもフェアなものなんです」と語ってくれました。消費者に如何においしく、安く、安全なものを届けるか、そもそもこの視点が大切なんですと。
「チャリティは往々にして上から目線でものを語る傾向が強いですが、フェアトレードは水平目線が大事なんです。生産者支援だけに向きがちな視点と平行線上に消費者も置いて考えることが非常に大事です」。この意見には、強い共感を覚えています。
Kさんは、イオングループのPB(プライベートブランド)を提唱し、それを事業化したのち、今度はある外食産業に移籍し、経営戦略のコンサルタントの立場から、企業のメイン事業に特化した「営利事業としての、戦略ツールとしてのフェアトレード」を社長以下経営陣の賛同の下、強力に推進しています。
私のスリランカの事業やその背景にある理念が、その企業に理解していただいたのも、まさにKさんがあってのことです。
高みに自身を置いたチャリティ的なフェアトレードではなく、企業の営業戦略として、生産者と消費者に対する水平目線でのフェアトレードの活用、事業戦略としてのCSRの可能性を追い求めるものとして、とても参考になりました。
「フェアトレードは立派な概念ですが、生産者と消費者の間のフェアなビジネス関係を構築するためのツールに過ぎません。フェアトレードは、不変的な形態などではありません。チャリティからフェアトレード、フェアトレードからビジネスへと変化させようとする想いと戦略、これが必要なのです」。私は、Kさんがいる限りは、この企業とは付き合っていけそうだと確信した次第です。(坂井)
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