短く斬れ

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胡錦涛のアフリカ行脚・・資源外交と力の空白


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一応の結果が出たらしい六者協議については
また明日にでも書くとして
今日は胡錦涛のアフリカ歴訪について書きます。


「貢献」「配慮」で存在感=アフリカ歴訪終え帰国−中国主席

 中国の胡錦濤国家主席は11日、
 アフリカ8カ国歴訪を終えて帰国した。
 資源獲得のため、人権改善など条件を付けずに
 援助や債務免除を展開する中国のアフリカ外交に
 国際社会の批判が高まる中、
 スーダンではダルフール紛争解決への貢献を強調。
 また、アフリカでも高まる対中警戒論に配慮した発言を繰り返すなど、
 資源外交を脱却し、責任ある大国として
 存在感を確立させることに全力を挙げた。
 
 「友好の旅、協力の旅」と位置付けられた今回の歴訪で、
 スーダンでは「紛争の政治解決」、ザンビアでは「経済協力」、
 南アでは「国連などを通じた国際連携」など、
 国ごとに対アフリカ政策の重要テーマを体現。
 李外相は「人類の文明進歩に向けた新たな重要な貢献」と強調した。  

   (時事通信)


胡錦涛のアフリカ行脚の旅が終わりました。

中国がアフリカの資源取り込みに本格的に乗り出したのは
ここ数年の話しですが、
世界的な対中警戒感の盛り上がりと共に
ようやく日本のマスコミも
この種のニュースを活発に取り上げるようになりました。
数年前と比べて隔世の感がありますね。

さて、胡錦涛のアフリカ行脚の詳細な内容は
下記のニュースを参照されてください。
こちらに詳しく書いてあります

資源確保へ中国流“援交" アフリカ行脚まとめ

計12日間に渡って
カメルーン・ナミビア・モザンビーク・セイシェル諸島・スーダン・
南アフリカ・ザンビア・リベリアの8ヶ国を訪問したわけですが、
今さらながらに中国の狂ったような対アフリカ外交には驚かされます。

ここ一年間だけを見ても、

◇2006年1月:李肇星外相、6ヶ国訪問

◇2006年4月:胡錦濤主席、3ヶ国訪問

◇2006年6月:温家宝首相、7ヶ国訪問

◇2006年11月:「中国・アフリカ協力フォーラム」を開催。
          アフリカ48ヶ国の首脳が北京に参集。

◇2007年1月:李肇星外相、7ヶ国訪問

◇2007年1月:胡錦濤主席、8ヶ国訪問

こんな調子で、
こうやって一覧にしてみると壮観ですね。
狂奔してると言っていいと思います。

今回のアフリカ歴訪で注目されたのは
ザンビアに「中国経済貿易協力区」を設立したことと、
スーダンのバシル大統領に
ダルフール問題をいい加減に解決するように釘をさしたことでした。

ザンビアと言えば
前に記事にしたことがありますが、

ザンビア:野党候補の「中国排除」発言
 ・・アフリカの一角で嫌中を叫ぶ

ここの最大野党の党首が大の嫌中派で
去年8月の選挙戦時に中国資本の追い出しを呼号し、
これに与党と中国政府は神経をピリピリさせてました。

ザンビアでは去年7月に
中国人経営者の賃金未払いで労働者のデモが起き、
これを制圧する際に中国人監督官が労働者らに発砲、
46人が死亡するという事件が起きました。

今回、胡錦涛が訪問した国の中でも
一番反中感情がわき上がっている国と言えそうです。

そして、スーダンですが
ここの大統領と中国政府は資源絡みで持ちつ持たれつの関係にあり、
同国のダルフール地方での大虐殺でも
国際的非難や制裁論の高まりに対して
その都度、中国政府はブレーキ役を任じてきました。

ダルフールの虐殺と中国の罪・・犯罪と資源外交

最近ではダルフールの虐殺に関して
スーダン政府とセットで中国も非難されることが多くなり、
さすがに胡錦涛もスーダンのバシル大統領に
この問題の解決を強く要請せざるを得ませんでした。

今、アフリカ諸国では
中国の援助に対する歓迎や期待と同時に
警戒の声もチラホラと上がり始めるようになりました。
上述のザンビア以外では
南アフリカなどでも対中警戒論がわき起こっているようですね。

南アはアフリカ諸国の中では比較的工業化が進んだ国ですが
それだけに安い中国製品と競合することが多く、
実際に繊維製品などは中国に市場を奪われているようです。

以下は去年6月のニュースです。


◇安価製品が地場産業直撃 アフリカ進出を南ア警戒
 
 エネルギー資源と繊維製品を中心に
 中国のアフリカ進出が加速する中で、
 同様に新興国として目覚ましい経済成長を遂げてきた南アフリカは
 中国への警戒感を示している。
 中国との経済関係の強化は期待しても
 中国の進出がアフリカ市場を重視する南ア企業の成長を
 妨げる恐れがあるからだ。
 南アのムベキ大統領は好ましい関係構築に向けて
 中国と話し合う必要があると訴えている。 

 中国とアフリカの関係構築は1950年代にさかのぼるが、
 急速な関係拡大に入ったのは2000年に
 「中国・アフリカ協力フォーラム」が北京で開催されてからだ。
 フォーラムは3年ごとに中国とアフリカ諸国で交互に開かれている。

 それ以降、中国の対アフリカ貿易額は一気に増え、
 2004年には約294億5000万ドルと、
 1999年の約64億8000万ドルから4・5倍以上に伸びた。
 中国の対外貿易全体での比率は2%強にとどまっているものの、
 03年以降は輸出入ともに30%以上の伸びを示し、
 その傾向は今後も変わらないとみられる。

 こうした中国のアフリカ進出に
 ムベキ大統領は5月下旬にブレア英首相との会談で訪英した際、
 英紙フィナンシャル・タイムズとの会見で、
 中国企業が南ア市場に関心を持つことは歓迎しつつも
 安価な中国製品の流入は
 地場産業には打撃になるとの懸念を表明した。

 ムベキ大統領は
 「南ア国内での中国企業への反発や脅威を解消させるために
 2国間で協議することが必要だ。
 中国が資源開発で南アに投資し、
 インフラ整備を進めるのは南アにとっても利益になるが、
 それ以外に検討しなければいけない課題がある」と語った。

 貧困にあえぐアフリカ諸国では
 消費面で中国からの多様な安い製品の流入に助けられているとはいえ、
 地場産業は中国との激しい競争をしいられることになった。
 中産階級層を狙った通信機器やハイテク機器も中国から輸入され、
 とくに南アへの影響は大きいようだ。

 南アには小売業や建設業から携帯電話事業と、
 有力企業が数多く、市場開拓で国外に目を向けてきた。

 金融や通信、小売りでは
 他のアフリカ諸国に進出して業績を上げている。
 アパルトヘイト(人種隔離政策)撤廃後は
 とくに外資との競争に勝つため、国外志向を強めているという。

 中国がアフリカに広範囲に進出してくると、
 南ア企業はアフリカ市場で中国企業と対峙することになるわけだ。

 一方で、アフリカには
 独裁的で非民主的な体制を残している国が多く、
 海外企業との提携も
 欧米よりは中国の方が都合がいいとの見方がある。
 アフリカの民主化を象徴する南アには
 アフリカの将来に不安を抱かせる状況ともいえる。

   (FujiSankei Business i. 2006/6/22)


中国からの援助を受けるアフリカ諸国の中では
南アは「民主主義」と「工業化」の進捗という面において
異質な国でもあります。

この南アの、

  「中国からの投資と援助は歓迎する」

  「でも、工業製品の市場を奪われるのは困る」

という二律背反な感情は、
工業化が進んでいる国ならではの悩みです。
大半の貧困なアフリカ諸国は
前者「投資と援助を歓迎」の部分の方が大きいわけです。

今、中国はアフリカ諸国にとって
米国・フランスに次ぐ第3位の貿易相手国となり、
アフリカに進出した中国企業は800社に達しました。

また、中国とアフリカ諸国は30以上の石油協定を結び、
2005年の時点で中国の原油輸入のほぼ3分の1が
アフリカからとなっています。

この中国の狂ったようなアフリカ進出は
ある意味、力の空白地帯を突いたと言えるでしょう。

アフリカは大半が貧困国家の途上地域であり、
域内にパワーを及ぼす大国が存在しません。

世界の他地域と見比べると、
アジアはすでに発展・成長の途上にあり、
先進国・日本や中国・インドという強国が存在します。
また、中南米もブラジルという「域内大国」があり、
アフリカと比較すれば貧困の度合いは少ないでしょう。

パワーという観点からすればアフリカは空白地帯であり、
長年ここを支配していた欧州諸国も
決定的な影響力を持っているわけではありません。

また、米国は
90年代のソマリア介入の失敗から
アフリカへに対して積極的に関与してきませんでした。

まさに中国は、この隙に乗じてきたわけです。
彼らから見たアフリカは
資源が多く、力は弱く、
人権や政治制度絡みで西側諸国が深く関与できない、
路傍の宝石の如き存在でしょう。

中国が一定の金額を投資しても、
経済成長著しい国相手ならば大して感謝もされないでしょうが、
アフリカの貧困弱小国ならば干天の慈雨に等しく、
同じ額でも投資効率が違います。

世界の中で一番取り残された地域であるアフリカに
「新興覇権国家」である中国が浸透するのも
歴史の必然なのかもしれません。

これはアジアと比較すれば一目瞭然ですが、
アフリカを貧困のただ中に取り残し、
経済成長へのモデルケースを提示してやれなかった、
欧米諸国の罪でもありましょう。



関連資料リンク

3年連続で3回目のアフリカ諸国訪問を行う胡錦濤・中国国家主席

<胡主席>アフリカ歴訪終了 各国には中国への警戒と活用論

中国「アフリカ支援」のウラ

なぜ今アフリカで反中感情が…?


関連過去記事

中国:北京でのアフリカ首脳会議・・覇者と「会盟」

ダルフールの虐殺と中国の罪・・犯罪と資源外交

ザンビア:野党候補の「中国排除」発言
 ・・アフリカの一角で嫌中を叫ぶ







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