【北京・浦松丈二】中国・チベット自治区ラサで大規模な暴動が発生してから、14日で1カ月を迎える。中国は海外からの人権批判に対しても、暴動を犯罪とみなす姿勢を崩さず、強行突破を図る構えを明確にしている。
胡錦濤国家主席は12日、海南島三亜でオーストラリアのラッド首相と会談し、3月14日に発生したチベット自治区ラサなどでの暴動について「赤裸々な暴力犯罪だ」と批判した。
胡主席が暴動後、事件の背景に言及したのは初めて。「チベットの事柄は完全に中国の内政だ。我々とダライ(ラマ)集団との矛盾は民族問題でも宗教問題でも人権問題でもなく、祖国の統一か分裂かの問題だ」と強調。主席自ら事件を主権問題と位置付けたことで、中国が人権批判に妥協する余地はなくなった。
中国が強硬姿勢を鮮明にする背景には、国内で高まる民族主義の圧力がある。中国大手ポータルサイト「新浪網」がインターネット上で、「分裂反対!聖火を守ろう」と呼びかけたのに対して、12日までに120万以上のネット署名が集まっている。
中国政府は国内向けに、チベット暴動と海外で相次ぐ聖火リレーへの妨害活動を「一部のチベット独立派による犯罪行為」と宣伝し、社会安定と民族団結を訴えている。北京の外交筋は「北京五輪を前に、チベット問題が他の少数民族の人権・民主化要求に波及することを警戒している」と分析している。
毎日新聞 2008年4月12日 22時03分