FRB議長が金融商品の時価会計に言及、一部海外勢は株買いに
[東京 11日 ロイター] 週末の東京市場は、株高/債券安が大幅に進み、日経平均は一時、300円を超す上昇となった。ドル/円が102円台と円安方向に動いたことや米株高などの要因に加え、バーナンキ米連邦準備理事会(FRB)議長が10日に金融商品の時価評価に言及し、見直しに含みを持たせた内容との見方がマーケットに出て、海外勢などからの買いが目立っていた。
ただ、11日にワシントンで開かれる7カ国財務相・中央銀行総裁会議(G7)での議論の結果を見極めたいとのムードも午後の取引中盤から広がった。
午前の取引から買い優勢だった株式市場は、午後の取引スタート直後に上値を追う展開になった。ある外資系証券の関係者は「バーナンキ議長が時価会計の見直しに言及したとも受け止めることができる発言をして、株は買いではないかとの見方が海外勢の一部に出た」と話す。複数の市場筋によると、業績予想を下方修正したみずほFG(8411.T: 株価, ニュース, レポート)にも海外勢などからの買いが集まって、前日比プラスで取引された。時価会計の不適用を邦銀にも適用した場合、一転して業績が上方修正になる可能性があるとの思惑が出ていたことも影響したという。
バーナンキ議長は10日、リッチモンドでの講演後の質疑応答で「流動性が非常に低い市場で資産を売却する動きが、評価損の計上、投げ売りといった事態につながったという意味では、時価評価が時に不安定要因として働いたと言える」と述べた。
全体としてみると、時価会計は投資家にとってプラスとなっているが、資産価値は、資産の流動性が低下している局面ではなく、市場が安定し、正常に機能している状況で決められるべきだと指摘した。
この発言に関連し、一部のメディアはG7で時価会計の問題を議論することになるバーナンキ議長が発言したと伝え、G7へのマーケットの関心が高まったという。ただ、ある邦銀関係者は「G7では、銀行の財務の健全性やその前提となる情報の透明化を進める方向で、当局の監督を強化することが議論されるのではなかったのか。それが時価会計を止めては、透明性の向上に反することになる。したがってそういう話になるとは思えない」と述べる。別の邦銀関係者は「時価会計を止めれば、金融機関への懸念が逆に強まって、金融株は売りを浴びるリスクも出てくる」と懸念を示す。
今後の展開について、ユナイテッド投信投資顧問・シニアファンドマネージャーの高塚孝一氏は「クレジット問題は、ほぼ全容がみえており株価を下押すドライバーにはもうならないだろう。来週17日にはメリルリンチ(MER.N: 株価, 企業情報, レポート)、18日にはシティグループ(C.N: 株価, 企業情報, レポート)が1─3月期決算を発表する予定であり、波乱を予想する声も市場にあるが、下値では買いたい向きも多いと見られるため、株価は下落しても限定的ではないか」とみている。
ただ、高塚氏は「懸念は企業業績だ。足元の業績は悪いのがわかっているが、先行き、その悪さがどのくらい続くのか、どの程度の深さなのかがわからない。金融市場の動向などさまざまな要素が絡むためだが、サブプライムローン(信用度の低い借り手向け住宅ローン)問題は過去に例のない事象であり、不確実性が高いことが予測を難しくさせている」と述べている。
円債市場では、国債先物の下落が目立った。海外勢を中心とした利益確定の売りやポジション調整の売りが加速。株先買い/債先売りの動きを巻き込みストップロスを付けて大きく下げ幅を広げた。先物6月限は一時前日比92銭安の139円13銭まで下落した。複数の市場筋によると、商品投資顧問業者(CTA)が前日に国債先物をかなりの規模で買い上げていたが、きょうの大幅な下げで損失覚悟の売りを強いられており、それが下げ幅拡大につながったという。
ただ、別の邦銀関係者は「国債先物と現物の取引主体が違っており、先物の振幅が大きくなっても、現物の値動きは約半分という感じだ」と指摘する。「現物の裏付けなき先物単独の売買」が最近の取引を特徴付けているという。
外為市場では、ドル/円が朝方の取引で、欧州系金融機関の大口のドル買いなどにより一時102.18円まで上昇。しかし、102円台では実需筋のドル売りを反映したとみられる大口のドル売りが本邦金融機関から出されたため、上値もその後は伸びなかった。ユーロ/円の利食いに押された売りが波及したとの指摘も出ていた。
(ロイター日本語ニュース 田巻 一彦)
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