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ソニーの創業者きょう“100歳”/途切れぬ井深大の系譜

2008年04月11日

 4月11日はソニーの創業者、故井深大氏の100回目の誕生日。希代の発明家は、世界中の技術者に影響を与えた。懐古主義ではない。復活に向かう今のソニーには、井深氏の精神を受け継いだ“グッドスピーカー(良き語り手)”がいる。(明豊)

 4月1日。東京・品川のソニー本社で入社式が開かれた。冒頭、中鉢良治社長は「辛めの質問は大歓迎。意見として心の中に刻んで経営にあたりたい」と真剣に切り出し、約600人の新入社員から自由に質問を受けた。

 しかし実際に質疑応答が始まると、中鉢氏の軽妙な話術で社長と若者の垣根は自然と取り払われていく。「君はどこに配属になるの。電池か。電池はこれからバンバン投資するので頑張って」と最後は握手で締めくくる。

 【真面目ナル】

 和んだ雰囲気の中でも中鉢社長は、これからソニーで仕事をする人たちに、どうしても言っておきたいことは忘れなかった。その象徴が「真面目ナル…」から始まる井深氏の会社設立趣意書だ。

 3年前、中鉢氏は「技術のソニーの復活を目指す」と宣言し社長に就任した。実はソニーの歴代経営者の系譜は、前任者と異質な部分を押し出してきた歴史でもある。

 盛田昭夫氏は、井深氏の技術本位にマーケティングの思想を植え込み、大賀典雄氏はアナログ主導から「CD」というデジタルの世界に踏み込んだ。出井伸之氏はネット社会のビジョンを打ち出した。

 【技術者の心共有】

 一方で、井深時代から変わらず脈々と受け継がれてきたのが「技術者の心を共有できるのがソニーの経営者」という考えだ。もともと音楽家志望だった大賀氏が井深氏顔負けの技術の知識を持っていたのは有名な話。しかし「出井時代はマネジメントと技術者の心に距離があった」(ソニー幹部)。

 井深氏は、社内の若手技術者が持ってきた試作品に欠点があっても、とがめることはしなかったという。「なかなかいいね。将来はどんなものを作りたいんだ?」といつも創造力をかきたてた。そして、盟友の本田宗一郎氏(ホンダ創業者)であれ、無名の若者であれ技術者の話を聞くのが大好きだった。

 【グッドリスナー】

 出井氏が中鉢氏を社長に指名した理由の一つが、人の話を良く聞く“グッドリスナー”であること。社長就任以降は、日本を中心に工場や研究所で頻繁に対話集会を開いた。もちろん聞き役ではあるが、井深氏の精神も説いてまわった。「言葉は風化する。トップがそのときの言葉で発信し続けることが大切だ」と考え、話し手の立場も非常に意識した。

 中鉢氏は井深氏と比較されるのはおこがましいと言うかもしれない。しかしソニーにその系譜がまだ生き続けていることだけは確かだ。井深氏は「ウォークマン」など人に感動を与える商品を次々生み出したが、「新しいものは“必要”から生まれる」というのが持論だった。

 中鉢氏は今後の商品のキーワードを「感動」プラス「共感」という。グッドスピーカー・中鉢氏とソニーは、井深氏を天に仰ぎ、日々“必要”を探し続けている。

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