※ 写真はCRH2-061C 産経新聞サイトより転載
新幹線を模倣? 中国初の時速300キロ列車
新華社電によると、中国山東省の鉄道車両メーカー、南車四方機車車両は22日、時速
300キロ走行が可能な初めての国産列車「和諧号」が完成したと発表した。来年3月に
鉄道当局に引き渡し、8月の北京五輪前に北京-天津間で運行を開始する予定。同社は川崎重工業などと提携、東北新幹線の「はやて」をベースにした車両の技術提供を
受け、高速旅客列車を生産している。新華社は「和諧号」について「外国の技術を導入、
吸収した上で中国が自主開発した」と伝えており、日本の技術がベースになっている可能
性がある。(共同)
(産経新聞 2007/12/22)
中国が「自主開発」したと言う車両ですが、写真を見る限り、川崎重工が南車
四方機車車両に製造ノウハウを移転した「CRH2」のライトを移設または追加
しただけの車両の様に見えます。WikipediaのCRH2の項目を見ると、今回
発表になった車両は、CRH2-061Cと呼ばれる車両で、CRH2が電動
車(M)4台、付随車(T)4台の4M4Tの構成であるのに対し、
6台、付随車(T)2台の6M2Tの構成になっており、最高速度もCRH2の
250キロが300キロに改善したとされています。
しかしながら、元になった東北新幹線の「はやて」に使われているE2系
1000番台車両が既に8M2Tの構成であり、電動モーターも全く同じもの
が使用されていますので、設計上は最高速度300キロという仕様は当初より
電動車割合を増加すれば満足されるものであったと言えます。
中国からすれば、250キロ用の車両の電動車を増やす対応を行ったのは、自
国の決定であり、対応を行った製造業者も自国の会社ですから、「自主開発」
と言う言葉を使いたいと言うのも、理解できなくもありません。
とは言え、電動車の数を増やす程度の事は、それ程、技術的難易度が高い訳で
はなく、「開発」と言えるものではないと言うのが、一般的な認識であると思
います。その点で、憤慨する向きがあるかも知れませんが、この件に関して言
えば、川重は強かに実利を取っているのではないかと思えるのです。
CRH2のノウハウ移転については、ブラックボックスの無い完全な技術供与
が行われたとされていますが、高度技術が使われている部品については、日本
から輸出されています。また、中国で生産されている部品にしても、中国では
組み立てているだけで中身は日本からの輸出と言うものも多そうです。
更に、今回の新車両のお披露目に際しても、ライトだけを位置変更すると言う
姑息な独自性発揮を行った訳ですが、本来は、先頭車両の形状は変更したかっ
た筈です。しかし、それが出来なかった事で、アルミダブルスキン構造車両の
外形変更すらできない技術レベルである事が判ってしまいました。
従って、中国「自主開発」車両であっても、実態は、CRH2車両の追加製造
であると言う事ができます。従来、中国在来線高速化については、日本には
60編成しか割り当てがありませんでしたが、今回の中国「自主開発」車両に
よって、日本の担当割合は更に増加したと考えるべきです。今回の報道に関し
て川重側から何ら異議が唱えられていない所を見れば、ライセンス料、重要部
品の発注など、川重として得るものは得ていると考えられます。
また、今回の車両が使用される路線は北京~天津を結ぶ京津高速鉄道とされて
いますが、従来、ICE3を中国向けとした「CRH3」の担当となっており、
高架スラブ軌道もドイツ仕様で作られてきました。CRH3のドイツからの船
積みが既に開始されているタイミングで、どの様な変更は行われたかは不明で
すが、CRH3車両の中国内での生産準備の面で、何らかの問題が発生した可
能性があります。
そういう状況の中で、最高速度300キロを達成可能で、契約上の条件も対抗
馬のフランスやカナダと比べ、緩かだった日本の車両にCRH3を代替するチ
ャンスが訪れたのかもしれません。(逆に言えば、日本は中国の都合の良い契
約を結ばされていたと言えます。)
京津高速鉄道は、最高速度が300キロと言う事もあり、中国高速鉄道商戦の
本命である北京~上海間の京滬高速鉄道のモデルとも言われてきました。
そういう点でも、中国高速鉄道商戦では日本は強かに儲ける事が出来るポジシ
ョンを得る可能性が高くなったと言えそうです。
by tokegawa
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