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純粋な子どもを思う気持ちか、それとも自分の老後のためか。理由はどうあれ子どもの教育費に糸目をつけない親は多く、その向かう先の1つが学習塾だ。さて、親の支払う月謝のうち、どれほどが講師の懐に納まっているのだろうか…?(バックナンバーはこちら


年収1千万超えを実現する学習塾経営とは

 すでに来春の受験に備えた学習塾・予備校の生徒獲得競争はスタート。ただし、その背後では教育関連企業を含めたM&A(企業の合併・買収)が活発化しており、およそ20社を数える株式上場組も例外ではない。

 「進研ゼミ」の添削指導など、通信教育大手で介護ビジネスも手がけるベネッセコーポレーションの傘下に入ったのは東京個別学院。昨年の3月にヘラクレス市場に上場、ところが、1年後の去る3月に上場を廃止したのは「サイシン」の秀文社で、同社は学習研究社の完全子会社の道を選択した。「東進ハイスクール」のナガセが、四谷大塚などを買収しているように未上場企業を含めるとM&Aの事例はさらに増える。

 年間5,000万円の売上を確保できれば、学習塾の経営は成り立つといわれる。月々3万円、それに夏冬特別講習などで生徒1人当たり年間50万円、100人の生徒を集めればいい計算だ。それを社長を含めて専任講師3人、時給1,500円程度の学生バイト15人程度で運営すると、専任講師3人合計で1,500万円程度の給料確保は可能になるという。

 なにしろ塾運営の経費は教室の家賃や教材費、それに10万部配布して100万円弱のチラシ代といったところ。したがって、粗利益も7、8割も不可能ではない。経営破たんした英会話NOVAで話題を集めた“前受金”だが、本来、授業料を前持って受け取ることができるのは学習塾の何よりの利点。学習塾の経営に詳しい専門家の1人はいう。

 「小学校4年生で入塾させたら6年生卒業まで退塾させないという学習内容、それに有名校への進学に自信があるなら、学習塾経営はチャレンジしてみる価値はある」

1回の授業料のうち3~5割が給与

 ただし、上場企業の学習塾・予備校ともなれば、粗利益7、8割の確保は現実的な数字ではない。平均では3割から4割といったところに落ち着く。本来の事業での稼ぎを示す営業利益率も各社各様で、5%前後から25%超のところまで幅広い。

 表は上場組大手4社の単体売上に占める広告費や家賃、講師・社員の人件費、役員報酬の割合、そして営業利益をまとめたもの。給与と家賃は、「原価明細書」「販売費及び一般管理費」に計上している数値を合算している。

 たとえば、1時間3,000円の授業料だとして、「栄光ゼミナール」の栄光は192円、市進は171円、すでに触れたナガセと東京個別学院はそれぞれ558円、447円の営業利益を確保していることになる。

 ナガセは通信衛星を利用した衛星予備校のフランチャイズを展開。東京個別学院は文字通り個別指導が主力。フランチャイズ事業を手がけたり、集団指導より個別指導の学習塾の方が利益率は高くなるということ。ちなみに、ベネッセが資本参加した明光ネットワークジャパンは前期25%超の高い営業利益率を示しているが、同社もまた「明光義塾」のフランチャイズを手がけている学習塾だ。

 一方、事務職の社員を含めた給与はというと、1時間3,000円の授業料に対して、栄光1,263円、市進1,482円、ナガセ795円、東京個別学院1,245円という計算になる。

 では、カリスマ講師といわれる、名の知られた講師はどうだろうか。(次ページへ続く)


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年収1千万超えを実現する学習塾経営とは
1回の授業料のうち3~5割が給与
カリスマ講師と地方の講師の給与格差は最大16倍
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1995年設立。代表・鎌田正文。週刊誌や月刊誌、経済誌などを中心に、金融・流通・サービス・メーカーなどの各分野から経済全般まで、幅広く取材・執筆。著者に『図解 業界地図が一目でわかる本』(三笠書房)など。


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