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2008年4月12日

◎「熱狂の日」音楽祭 県民参加で雰囲気も「輸入」を

 このほど発表されたラ・フォル・ジュルネ金沢「熱狂の日」音楽祭の全八十公演の内容 は、フランス発祥のこの世界的音楽祭の仕掛け人であるルネ・マルタン氏の言う四つの基本概念のうち、「一公演五十分以内」「入場料は低価格または無料」「複数の会場で同時演奏」という三点に十分に配慮したものとなっている。もう一つのポイントは「お祭り騒ぎ」であり、これを本番で実現できるかどうかが成功の鍵を握りそうだ。

 お祭りムードを盛り上げるために何よりも大切なのは、やはり県民の積極的な参加だろ う。一人でも多く、一回でも多く会場に足を運ぶことによって、「世界で最もエキサイティング」と形容されるこの音楽祭の本場である仏・ナント市の雰囲気も、ぜひ「輸入」したいものである。

 音楽祭が開かれる大型連休には、金沢市中心部でも各種イベントが繰り広げられる。た とえば広坂通りの「春の舞ひろさか」も、金沢城公園の「百万石菓子百工展」も、歴史こそ比較的浅いものの、この時期の定番行事として定着しつつある。音楽祭の会場となる金沢駅周辺を起点に、お祭りムードを市中心部にも広げていけば、相乗効果も生まれよう。

 今年、十四回目の音楽祭が開催されたナント市は、歴史的景観を残す人口三十万人弱の 静かな地方都市だが、音楽祭の期間中は、仏国内はもちろん欧州各地から音楽愛好家が集まり、普段とは空気が一変するという。金沢でもこの音楽祭を定着させ、本場のように県外からも大勢のファンを集められる一大イベントに育てていきたいと期待する関係者は少なくない。

 確かに、二〇一四年度の新幹線開業を見据えて金沢の吸引力を高めていくためには、魅 力的なイベントを増やすことも有力な手だての一つであり、その意味でも最初が肝心だ。県民参加と言っても、取り立てて難しいことが求められるわけではない。普段着で気軽に会場に立ち寄って、素晴らしいベートーベンの調べにただ拍手を送るだけでよいのである。クラシック特有の「敷居の高さ」も、おそらく感じることはないだろう。

◎対北制裁延長 韓国の「参加」促したい

 核や拉致問題で進展が見られぬ以上、やむを得ない判断だろう。政府が対北朝鮮経済制 裁を半年延長する方針を固めた。今後、重要なことは、日本独自の「圧力」だけでなく、李明博政権の誕生で、北朝鮮に強い姿勢を示し始めた韓国と固くスクラムを組むことである。北朝鮮制裁に及び腰だった盧武鉉政権では望むべくもなかった北朝鮮包囲網のなかに、韓国の積極的な「参加」を促したい。

 北朝鮮は六カ国合意に基づいて〇七年末までの実施を約束した、すべての核計画の完全 かつ正確な申告を履行せず、拉致問題でも何ら前向きな対応を取らなかった。北朝鮮側による実質的な「ゼロ回答」であり、日本が制裁を解除する理由は見当たらない。

 暗礁に乗り上げた六カ国協議で北朝鮮がよほど思い切った譲歩を示し、実行に移さぬ限 り、北朝鮮船舶の入港全面禁止や全品目の輸入禁止などを盛り込んだ日本独自の経済制裁を粛々と続けていくほかあるまい。

 日本にとって幸いなことに、李政権の誕生により、過去十年続いてきた韓国の対北融和 政策が大きく転換する可能性が出てきた。北朝鮮はこのところ、李大統領を名指しで非難し、「すべての南北対話の中断」を宣言するなど、韓国批判を強めている。

 これに対して李政権は北朝鮮の恫喝をものともせず、毅然とした態度を取り続けている 。南北の平和を願うあまり、北朝鮮の人権問題について及び腰だった韓国政府の変化は心強い。

 今月中旬、日韓、米韓首脳会談が開催されるが、対北朝鮮対策で一致できる部分は、か つてないほど大きくなっている。特に李大統領は日本人および韓国人の拉致問題について「必ず解決すべき問題」などと発言した。韓国は国連人権理事会での北朝鮮の人権問題に関する決議採択を過去三回、棄権するなどしてきたが、李大統領の就任後は一転して賛成票を投じた。日韓が拉致問題で共闘すれば、北朝鮮に対する大きな圧力になるだろう。福田康夫首相と李大統領の日韓首脳会談に期待したい。


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