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2008年4月12日

 花だよりに「満開」の文字が並ぶ。ほどなく「散りはじめ」となる。咲き誇る桜も、桜吹雪も私たちの好きな光景である

海の向こうでも、長い冬に耐えた花が咲いた。野茂投手が3年ぶりの米大リーグ復帰を果たした。野球の本場に乗り込んで輝かしい実績を残し、なお現役にこだわる。本場に他流試合を挑み、日本の野球の素晴らしさを広めた先駆者である

島国育ちの私たちは、広い世界に活躍の舞台を求める他流試合が苦手とされている。パリで個展を開いた洋画家に聞いた話だが、「日本人がなぜ西洋の絵を描くのだ」と、からかい半分に問われたという。こたえていわく、絵筆や絵の具は西洋製だが、「色や線は日本のもの。君らに、まねはできまい」

野球も洋画も、西洋から輸入され、西洋を手本に広まった。が、いつまでもその風下に甘んじるのではなく、本場で他流試合に挑む人こそ頼もしく映る

野茂投手の復帰の舞台は、敗色濃厚な終盤。実績ある投手には物足りない場面で、前途の厳しさがあるいは本人の頭をよぎったかもしれない。だからこそ、応援のしがいもある。


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