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2005年07月29日(金)

野菜のナレーション

テーマ:ブログ
 永田農法の野菜の作り方をDVDにする、というプロジェクトが進行している。
http://www.1101.com/yasai_tsushin/2005-05-26.html

 このプロジェクトには、にしもっちゃんや丹治さんが加わっているので、どんなことをやっているのかはなんとなく知っていたのだが、そのDVDのナレーションを担当することになった。

 火曜日に4巻分の収録をしたのだが、1本45分程度のものを4本分録ったので、ものすごい分量であった。普通のテレビ番組であれば、大抵誰かがしゃべったり動いたりしているので、ナレーションの分量は番組全体の3分の1程度だろう。しかし今回は野菜が相手だ。当たり前だが、野菜も畑も何もしゃべらないし動かない。ほとんどがナレーションということになる。

 ひとつの野菜につき5分程度で、それが6つで1巻分になるのだが、それを4巻分録音するのにどれだけかかったかというと。

 午後2時半にスタジオに入り、全部終わったのが夜中の1時であった。途中、ちょっとした休憩と食事を挟んだが、それでも10時間近くナレーションブースにこもっていたことになる。

 プロデューサーの諏訪さんも「こんなの無いよねぇ」と言っていたが、私も経験が無い。単純に読むだけならもっと早いだろうが、映像にタイミングを合わせたり、声で聞いてみてわかりにくい文章を修正したり、という作業があるので時間がかかるのだ。その上分量が多い。
 だんだんと顔の筋肉が疲れて口がまわらなくなり、「育てる」というなんでもない言葉が言えなくなったりした。大変な仕事だったことは確かなのだが、私はちっともイヤにならなかった。

 ここ数年の、たくさんの人との出会いのきっかけを作ってくれたのは、この野菜だった。この野菜のおかげでイズミさんと知り合い、にしもっちゃんと知り合い、田中さんと知り合い、糸井さんと知り合い、ランディさんと知り合い、丹治さんと知り合い、みずえさんや倫子ちゃんやみかちゃんや、とにかくこの日記に登場するたくさんの人と知り合った。
 田中さんは私の友達と結婚したが、私が野菜に出会っていなかったら、田中さんの結婚だって無かったことになる。私だって、バレエをやることになどならなかった。

 そういうことを、待ち時間にずっと考えていた。この仕事が私にまわってきたのは、とても感慨深いことだった。

 私よりナレーションが上手な人ならたくさんいると思う。でも、画面の野菜に感謝しながら読むのは私ぐらいだろう。この野菜のことを知って欲しい、と心から思いつつ読んだ。
 ただ読むだけじゃなかった。一番最後に読んだのはほうれん草のブロックだったが、その最後のコメント「サラダで味わってみてください」に、生で食べられることを強調するために「ぜひ生で」をつけ加えたらどうでしょう、とか提案していた。午前1時の終わる直前まで、そういう気持ちで仕事をしていた。

 諏訪さんはNHKエンタープライズの方なので、ナレーションを私に、という話が出たとき、どんな声の人なのか確認するために、3月まで教育テレビで担当していた「暮らしQ&A」のVTRを借りたそうだ。対応してくださったのはQ&Aで2年間お世話になった香川さんだったそうだが、香川さんはVTRを渡すとき「どうぞ今泉さんをよろしく!」と言ったのだとか。
 よろしく、というのは「今泉さんにどうぞよろしくお伝えください」のよろしくじゃなくて、「今泉さんをどうぞよろしくお願いします」といったニュアンスだったらしい。ありがたくて笑ってしまった。

 香川さんは「暮らしQ&A」が終わるときに、なんとか次の番組でも一緒に仕事ができるよう尽力してくださった。私のほうは、番組が変わるのだから出演者が変わるのは当たり前だと思っていたのだが、香川さんには「今泉さんには本当にお世話になったのに、力になれずすみません」と何度も言われたものだった。今でも私のことを気にしていてくれるなんて、本当に嬉しい。

 香川さんが貸してくれたVTRを見て、諏訪さんは私の声がこのDVDに合うと判断してくれた。いくら私が、糸井さんやにしもっちゃんや丹治さんと知り合いでも、声が合わなければこの仕事はやれなかったのだ。ありがたいめぐり合わせだとしみじみ思った。

 収録はあと2回あって、2回ともたぶん大変だと思うのだが、大変でもやっぱりありがたい。