米映画の往年の大スター、チャールトン・ヘストン氏が亡くなった。中・高校時代、夢中になった男優で、かなりの値段の写真集を買った記憶もある。
アカデミー賞主演男優賞を獲得した代表作「ベン・ハー」(一九五九年)はローマ帝国が舞台の大スクリーン向き大作。最初見たのは小さなテレビでだったが、大迫力のアクションやスリル満点の展開で画面に引き込まれた。とにかくヘストンが格好良かった。アカデミー賞史上最多の十一部門で受賞、名監督ウイリアム・ワイラー氏も監督賞を取ったが、私は「ヘストンの映画」と思っている。
同じ歴史物の「十戒」、サスペンス「黒い罠」、西部劇「大いなる西部」、SF「猿の惑星」など多彩なジャンルで存在感ある演技を見せてくれた。B級評価の作品もヘストンがいれば楽しかった。
そんな思い出深い大スターの死亡記事を複雑な思いで読んだ。各紙は映画での輝かしい足跡に加え、晩年に全米ライフル協会長を務め、銃規制に反対する象徴的存在だったことを記していた。
ヘストンが話題に上った最後の映画はマイケル・ムーア監督の「ボウリング・フォー・コロンバイン」(二〇〇二年)だろう。銃乱射事件をテーマとし、銃社会アメリカを糾弾するドキュメンタリー。ムーア氏にインタビューされ厳しく追及されるヘストン全米ライフル協会長は明らかに“悪役”だった。
ずっと格好良いヒーローでいてほしかった…。訃報(ふほう)を読んだ後しばらく、ほろ苦く、切なく、寂しい思いが続いた。冥福を祈る。
(津山支社・井谷進)