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【社会】

反戦ビラ配布で処罰は合憲 最高裁が上告棄却「他人の権利侵害」

2008年4月12日 朝刊

 東京都立川市の防衛庁(当時)宿舎の新聞受けに、自衛隊のイラク派遣に反対するビラを許可なく入れたとして、市民団体のメンバー3人が住居侵入罪に問われた事件の上告審判決で、最高裁第二小法廷(今井功裁判長)は11日、「表現の自由は無制限に保障されるわけではなく、他人の権利を害する手段は許されない」と被告側の上告を棄却した。一審の無罪判決を破棄、3被告を罰金20万−10万円とした東京高裁判決が確定する。

 政治的意見を記したビラの戸別配布について「居住者が平穏に生活する権利」の侵害を理由に処罰することが、憲法の保障する「表現の自由」に違反するかが争われた。最高裁として初の判断とみられ、市民レベルでの政治的活動の在り方に影響を与えそうだ。

 判決はビラの内容とは関係なく、ビラを配るという表現の「手段」の是非について検討。「表現の自由の行使でも、官舎の共有地に管理権者の意思に反して立ち入ることは、管理権を侵害し、私的生活の平穏を害する」と指摘した。

 さらに官舎の敷地がフェンスで囲われ、出入り口などにビラ配りを禁じた掲示があったことを重視。住民から被害届が出されており「被害が軽微とはいえない」と述べた。裁判官3人一致の意見。

 3人は市民団体「立川自衛隊監視テント村」の大西章寛被告(34)、高田幸美被告(34)、大洞俊之被告(50)。

 被告側は、政治的なビラ配りに刑事罰を科すのは、表現の自由を保障した憲法21条に違反すると主張していた。

 一、二審判決によると、3人は2004年1月、立川市の防衛庁宿舎内に入って、玄関ドアの新聞受けに「自衛隊のイラク派兵反対」などと書かれたビラを投函(とうかん)。大洞被告と高田被告は2月にも立ち入った。3人は逮捕後、75日間にわたって拘置された。

 一審の東京地裁は、懲役6月の求刑に対し、「ビラ配りは憲法で保障された政治的表現活動。住民の被害は小さく、刑事罰にするほどの違法性はない」と無罪とした。しかし、東京高裁は「住民の不快感を考えれば被害は軽微ではない」として3人に罰金刑を言い渡した。

 人権団体のアムネスティ・インターナショナルは04年、3人を思想信条を理由に拘禁された「良心の囚人」に日本で初認定した。

 

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