ここから本文エリア 救急存亡 読者の声 若手医師が敬遠/市民も危機感2008年03月23日 救急医療の実情を報告する「救急存亡」の一連の記事に、読者から100通近い投書が寄せられた。「医療崩壊」を実感する救急医たちは日々、望ましい方向を模索している。不適切な救急病院の利用や非常識な要求が、どれほど現場の士気をくじくかを訴える声も目立った。一般の読者からは、医療側と患者側の信頼関係が大切、とする意見が多数届いた。 ◇ 和歌山県の病院に内科医として勤める浜崎俊明さん(37)は、5月から救命救急センターに復帰するつもりだ。 消化器内科として腕を磨こうと、いったん救命センターを離れた。だが、医師不足で救急医療を取り巻く状況は悪化。国が進める医学部の定員増の効果が出るのは10年以上先だ。「何とかしたい」と思った。 「夜中なら待たずに済むから」と言い放つ患者。最善の医療をしても、「医療ミス」と非難される風潮にも失望してしまう。救急に興味がある研修医さえ、研修を終えると救急を選ばない。「現場に戻ったら救急を担う医師を育てたい。国は患者側のモラル向上にも取り組んでほしい」 兵庫県の男性麻酔科医(41)が勤める病院には、「専門外の患者は責任を持てない」「心肺停止患者は処置できない」と当直を断る医師が数人いる。病院側もその主張を認めてしまう。 かつては大学医学部の医局が人事権を握っていたが、04年度に始まった新臨床研修制度で医師が勤務先の病院を自由に選び、気に入らない病院を去る傾向が強まった。「今の研修制度を否定するつもりはないが、ひずみが生じたのは事実。人事を調整する必要がある」 同県の病院に勤務する40代の外科医は「産科、小児科、救急に続いて崩壊が迫っているのは外科」と強調する。訴訟リスクが高く見返りが少ない外科の現場を体験した研修医が専攻しなくなり、病院に嫌気がさした外科の勤務医もメスを捨て、開業に走る。「勤務医と開業医の収入格差を同程度に是正しなければならない。開業のメリットが大きい今のままでは、勤務医の流出は止まらない」と警告する。 開業医の側からも、理解を求める声が寄せられた。救急病院やへき地診療所の勤務経験がある大阪市中央区の医師(54)は、開業した今も週1回、救急病院で夜間の当直を続ける。 「開業医はもうけているのに、夕方早く帰る」と非難されることがある。実際は診療所で外来患者を診た後、夕方から在宅患者の自宅を回る。病院への紹介状や診断書、介護意見書を書くのは夜。かかりつけの患者が急病になれば、何時でも往診する。体力に限界を感じることも多い。「派手な医師は少数。勤務医は開業医を誤解している」と訴える。 ◇ 市民からは現状に危機感を抱く意見が相次いだ。 神戸市西区の主婦高橋環さん(50)は、自分の命を削ってまで救急医療に取り組む医師や看護師らの実態を知り、心を痛めている。「多くの人が互いに思いやりや感謝の気持ちを持たなければ、どんなに良い体制を整えても長続きしない」 大阪大学大学院生の新谷翼さん(25)は過労で医師が倒れる現状に、「この状態を放っておいていいのか。自分の命が危うい時に診てもらえない恐れもある。私たち自身が真剣に考えるべきテーマだ」と寄せた。 大阪府東大阪市の主婦(39)は「現場の頑張りだけでしのいでいる今の状況はおかしい」。道路特定財源問題で、「救急病院までの道路が必要」と訴える政治家にも疑問を抱く。「道路を作っても医師がいなければ意味がない。財源を医師確保に回せばいいのに」 大阪市西区の料理教室講師の女性(43)は、社会全体の空気が影を落としていると考える。高熱の子どもを家に置いて仕事に来る女性に出会う。パートのような不安定な立場で働く人にとって急な欠勤がリストラの対象になる恐れがあり、休みづらい。それが夜間や休日の救急病院の利用につながっていると感じる。 「ギスギスした世の中になり、ひずみがひずみを生んでいる。医療崩壊の根は深く、社会全体の問題として考えないと解決しない」と指摘する。 PR情報救急存亡
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